2人の欧州組GK川島永嗣と権田修一を襲った明暗…シーズン打ち切り仏と5月末再開のポルトガル…それぞれの思い
風向きが大きく変わったのは2月9日のスポルティングCP戦だった。それまで7試合連続で白星を得られなかった状況を受けて、チームは権田を先発で起用。スポルティング戦を含めて5試合連続でゴールマウスを守った直後に、新型コロナウイルスの直撃を受けた。 「もしも感染者が出てしまったらどうなるのだろう、という疑問を含めて、リーグ戦を始めて大丈夫なのかなという不安は当然あります。微妙な心境ではありますけど、自分の仕事はサッカー選手なので、みなさんに勇気を与えるためにも早く始めたい、という思いもあります」 突然変わった状況に「僕もあまり整理ができていなくて」と苦笑いした権田だが、自身が先発した5試合も2分け3敗と勝利を手にしていない。今年に入ってまだ手にしていない勝ち点3と降格圏となる17位からの脱出を目指して、残された10試合へ向けて急ピッチで心身を作り直していく。 3月に37歳になった川島は、大宮アルディージャでプロの第一歩を踏み出した2001シーズン以来となる、リーグ戦における出場機会なしでシーズンを終えた。守護神のベルギー代表マッツ・セルス、年代別のフランス代表に名前を連ねてきた23歳のビングル・カマラの後塵を拝する形で、27試合で打ち切られたリーグ戦でベンチ入りを果たしたのもわずか一度にとどまっている。 もっとも、第3キーパーの立場は覚悟の上だった。ストラスブールとの契約が一度満了した昨夏。3つしかない外国人枠を出場機会がまず巡ってこない第3キーパーのために使いたいと、ピッチの内外で川島が見せてきた真摯な姿勢へ敬意を表する形で、2年間の延長が決まっていたからだ。 「何より挑戦する事が目的ではなく、1%の可能がある限り、事を成す、ことが目的だということ。今までも周りから見れば無謀な挑戦をしてきたかもしれません。そしてまた、無謀な挑戦をしようとしています。でも1%の可能を自分の手から手放す事は僕にはできません」 契約延長が決まった直後に、自身のブログに綴った決意を川島は実践し続けてきた。挑戦とは出場機会はおろかベンチにすら入れない日々が続いても、常に万全の準備を整えておくこと。昨年はロシアワールドカップ以来となる日本代表への復帰も果たし、森保ジャパンでは3試合に出場している。 「こういう状況になってしまったのは仕方がないし、どこまで元通りになるのかもわからないけど、コンディションを含めて来シーズンへ向けて準備するしかない、という気持ちでいます」 フランスリーグは8月22日に2020-21シーズンを開幕させる青写真を描いている。現地時間4日に再開か打ち切りかの投票が行われるベルギーリーグでプレーする28歳のシュミット・ダニエル(シント=トロイデンVV)を含めて、新型コロナウイルスに翻弄されながらも、森保ジャパンに名前を連ねるゴールキーパーたちはヨーロッパの地で、それぞれ異なる道を必死に前へと進んでいく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)