「議論すべきは不記載防止」石原伸晃・元自民党幹事長、「『全国民の代表』自覚を」一橋大・江藤祥平教授 政治資金規正法再改正インタビュー(上)
自民党は「寄付の自由は最高裁判決で認められている」との理由で、企業・団体献金の禁止に踏み込まないことを正当化している。しかし、判決は献金を無条件に容認してはいない。 岸田文雄前首相が国会で挙げたのが、八幡製鉄(現日本製鉄)から自民への献金について株主が「定款の目的範囲外だ」と当時の取締役を訴えた「八幡製鉄献金訴訟」だ。最高裁は1970年、「会社といえども政治資金の寄付の自由を有する」と判断したが、「公共の福祉に反しない限り」とくぎを刺した。リクルート事件発覚前の判決である点も留意すべきだ。 判決はまた「大企業の巨額寄付は金権政治を生む」という懸念にも応え「立法政策を待つ」と国会にボールを投げた。今回の政治資金規正法の再改正でたとえ企業・団体献金を禁止しても、それは立法政策の枠内であり、憲法違反とはみなされないだろう。 争点は、現行の企業・団体献金に対する規制が公共の福祉を十分実現しているかどうかだ。これだけ政治不信が高まる中、国民の信頼を回復するためには抜本的な対策が求められる。
与党が「献金の有無が政策に影響した事実はない」と主張しても「資金を多く出す組織の言いなりなのではないか」という疑念を国民に抱かせること自体が民主主義には致命的だ。国民に自身の声が平等に反映されているとの実感がなければ、1人1票の投票権に価値を見いだせなくなってしまう。 これは国民主権を左右する問題だ。国会議員は企業・団体の代表ではなく全国民の代表であることを肝に銘じてほしい。 × × × えとう・しょうへい 1981年兵庫県生まれ。専門は憲法学。弁護士経験もある。 × × × 企業・団体献金 企業や業界団体からの政治献金。政治家個人への献金は2000年に禁止されたが、政治家が代表を務める政党支部は受け取ることができる。平成の政治改革で企業・団体献金を禁止する代わりに政党交付金が導入された経緯があり、野党は現状を「二重取り」と批判。政治資金規正法の再改正では、立憲民主党などが禁止を主張している。