離婚すると年金も分割できる!「合意分割」と「3号分割」を解説
夫婦が離婚する際には共有財産を分け合いますが、年金も分割できることをご存じでしょうか。特に、専業主婦(主夫)の方は、老後に受け取る年金が老齢基礎年金のみとなることが多く、離婚すると老後の生活が困窮する可能性があります。 ◆【写真3枚】公的年金制度のしくみ。2枚目以降では、離婚時の年金分割の概要などについて掲載。 年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」があり、それぞれ利用できる条件があります。 この記事では、年金分割制度とはどのような内容なのか、概要や特徴を解説するとともに、年金分割の計算方法を確認していきます。 ※編集部注:外部配信先ではハイパーリンクや図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際はLIMO内でご確認ください。
年金分割制度とは
年金分割制度とは、夫婦が離婚した場合に、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付実績を分割し、それぞれが老後の年金として受け取れる制度です。 年金分割制度を利用する際には、日本の公的年金制度を理解する必要があります。日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金の2階建てとなっています。 このうち年金分割制度の対象になるのは、厚生年金の部分のみです。しかも、婚姻期間中の納付実績が対象なため、独身時代の分は対象外となります。 なお、年金分割制度は夫から妻へと決められているわけではなく逆のケースもあり得ます。専業主夫の場合や、夫より妻の厚生年金保険料の方が高額な場合は、妻から夫へ分割可能です。 次の章では、年金を分割する際に適用される2つの制度についてみていきましょう。
「合意分割」と「3号分割」
年金分割制度には「合意分割」と「3号分割」の2つの制度があります。それぞれの概要を確認していきましょう。 ●合意分割 夫婦が離婚し次の条件に該当する場合に、婚姻期間中の厚生年金納付実績を分割できます。 ・婚姻期間中に厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)がある ・夫婦の合意または裁判手続きにより分割割合を決めた ・離婚をした日の翌日から2年を経過していない 大前提として、婚姻期間中に少なくても夫婦のいずれかに厚生年金記録があることが条件です。年金分割する際の分割割合は、夫婦の合意で決めるのが原則ですが、合意が得られない場合は裁判手続きにより決定します。 婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)の多い方から少ない方へ、記録が分割されます。分割割合は2分の1が上限です。 合意分割の請求をした際に、3号分割の対象期間が含まれる場合は、合意分割とあわせて3号分割の請求もあったとみなされます。3号分割の対象期間は、3号分割による分割に加え、合意分割による分割も行われます。 ●3号分割 夫婦が離婚し、次の条件に該当する場合、国民年金の第3号被保険者だった方からの請求により、相手の厚生年金記録を2分の1ずつ分割できます。 なお、国民年金の第3号被保険者とは、配偶者に扶養されていた方のことで、専業主婦(主夫)やパート・アルバイトで扶養の範囲内で働いていた方などが該当します。 ・婚姻期間中に平成20年4月1日以降の第3号被保険者期間がある ・離婚をした日の翌日から2年を経過していない 年金分割の対象となるのは、平成20年4月1日以降の婚姻期間です。 3号分割は、分割することについて夫婦間の合意は必要なく、第3号被保険者だった方の請求のみで申請できます。また、分割割合は一律で2分の1になります。 ただし、分割される方が障害厚生年金の受給権を有していて、分割請求の対象となる期間を年金額の基礎としている場合は、3号分割は請求できません。 次の章では、実際にどのように年金が分割されるか、計算方法を確認していきます。