教え子たちが「元プロ野球選手」の肩書のみを重視する会社へは就職してほしくない理由(持丸修一/専修大松戸 野球部監督)
【持丸修一 76歳名将の高校野球論】#52 うれしいニュースが飛び込んできました。 【写真】日本ハム2位・藤田琉生 実業団バレー選手だった両親のDNA…母は全国屈指ママさんチームで現役キャプテン 藤代(茨城)時代の教え子のロッテの右腕・美馬学(38)が無事に契約更改を終えたとのことです。今オフ本人といろいろと話していただけに、一安心です。 2010年に東京ガスからドラフト2位で楽天に入団。国内FA権を使って19年オフにロッテに移籍し、昨季まで入団から13年連続勝利を収めていましたが、今季はケガも重なり一軍登板3試合で白星なし(2敗)。契約更改後の会見では「正直、クビだと思っていた」とコメントしたようです。 来季の年俸は1億円もダウンしましたが、プロの舞台で野球を続けられて本当に良かった。税金は大変そうですけどね(笑)。 去就が心配なのは昨オフ日本ハムからポスティングでメジャーリーグに挑戦し、現在はレッドソックス傘下3AからFAとなった上沢直之(30)も同様です。挑戦を続けたい気持ちは分かりますが、家族がいるし、古巣への恩義もあるようで、悩みは深そうです。本人の決断を見守りたい。元気な声で報告してくれる時を待っています。 プロは厳しい世界です。脚光を浴びる選手はほんの一握りだけ。日の目を見ないまま、ひっそり球界を去る選手が大多数です。 これまで13人の教え子がプロ野球選手になり、当然、志半ばで引退した選手もいます。彼らから報告を聞く時は胸が詰まりそうになります。戦力外になった選手は息をつく間もなく、セカンドキャリアを模索しなくてはいけません。私は彼らにこう尋ねてきました。 「野球に携わる仕事か、まったく関係ないサラリーマン、どっちを考えているんだ?」 後者を選ぶ場合、“元プロ野球選手”という肩書はそれなりに需要があるそうです。例えば不動産会社や自動車ディーラーなどからは引く手あまただとか。現役時代のつながりから、かつての同僚への営業について、これ以上ないアドバンテージが働くでしょうから、もっともです。 個人的な意見ですが、“肩書”のみを重視している会社への就職はしてほしくありません。最初のうちはうまくいったとしても、いずれそのカードは通用しなくなる。毎年ヤマのようにプロから押し出される選手がいるのだから、次々と“代わり”も出現します。言葉を選ばずに言うと、好きな野球だけをやってきたような人たちが、その変化に適応できるのか。セカンドキャリアのスタートダッシュは切れたとしても、結局はつまずいてしまうのではないかと心配なのです。 だったら、肩書などではなく“個人の資質”を見てくれる企業や、本人に適性のある道へ進んでほしい。引退してからの人生の方がはるかに長い。目先の環境や待遇だけではなく、将来を見据えて悔いのない選択をしてほしいーー。 引退する教え子とは、そんな話をしています。 (持丸修一/専修大松戸 野球部監督)