トランプ氏弾劾へ調査開始 「ウクライナ疑惑」主要関係者を整理する
■ユーリー・ルツェンコ元検事総長: 2016年3月に罷免されたショーキン氏の後任として、同年5月に検事総長に就任。今年5月にはブリスマ社が関与した疑いのある汚職事件の捜査再開を計画していると発言したが、のちにハンター・バイデン氏の違法行為を示す証拠は存在しなかったと語っている。8月29日に突然辞任。
■ヴィクトル・ショーキン元検事総長: 2015年、当時のポロシェンコ政権で検事総長に就任。ウクライナ政界上層部の汚職追及には就任当初から消極的な姿勢を見せており、それによってウクライナ国内外から激しい批判にさらされていたが、ブリスマ社に関する汚職捜査は行っていた。オバマ政権は「ウクライナ国内にはびこる汚職の一掃に消極的な検察に対してアクションを起こさない場合、10億ドルの借款は白紙に戻す」と、当時のポロシェンコ大統領に圧力をかけ、ウクライナ議会は2016年3月にショーキン氏を罷免した。トランプ大統領としては、ショーキン氏の罷免がアメリカ政府からの要請で、その背景にあったのがブリスマ社で役員を務めていたバイデン氏の次男ハンター氏の存在であったと結論付けている。
【内部告発者】
1人目の内部告発者:個人を特定する情報は一切明かされていない。ホワイトハウス高官にアクセスすることが可能なCIA職員とされている。米紙ニューヨーク・タイムズは9月26日、この人物が7月25日に行われたトランプ‐ゼレンスキー会談の内容を複数のホワイトハウス関係者から聞き、8月12日に監査官に告発を行ったと報じている。監査官は告発状の内容を審査し、8月26日に告発状を「信用できる内容であり、緊急を要する重要な問題」とする書簡とともに、マグワイア国家情報長官代行に提出。しかし、マグワイア長官代行はこれらを下院情報委員会には知らせず、さらに機密指定まで行っていた。9月18日、米紙ワシントン・ポストが「トランプ大統領が外国政府首脳との会談の中で行った約束に懸念を示す内部告発者がいる」とスクープを出す。ポスト紙は翌日に会談相手がウクライナのゼレンスキー大統領であったと報じた。ペロシ下院議長が弾劾に向けた調査の開始を先月24日に発表すると、26日には告発状と監査官の書簡は機密指定解除された。 2人目の内部告発者:上述の1人目の内部告発者を担当する弁護士が今月6日、2人目の内部告発者の存在について語った。この人物も情報機関に勤務しており、「ウクライナ疑惑」に関する一次情報を持つ人物とのこと。1人目の内部告発者はトランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話会談を直接聞いていなかった。現時点で、2人目の告発者は弾劾に向けての調査を進める下院情報委員会に情報を提供していないが、米紙ニューヨーク・タイムズは今月4日に「1人目の人物よりもより直接的な情報を持つ人物が告発を検討中」と報じている。この日に報じられた人物と2人目の内部告発者が同一人物かについて、担当弁護士はコメントしていない。