リンダ・グラットン「いまいちど、共働き子育て世帯のためにやるべきことをおさらいしよう」
『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』の著者リンダ・グラットンが、変化の激しい現代のワーク・ライフ・バランスを論じる連載。 【画像】『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT──100年時代の人生戦略』で有名な組織論学者のリンダ・グラットン いまや子育て世帯も共働きが一般的。この流れが逆行する可能性は低いだろう。だとしたら、社会全体で親たちの支援をさらに進めていかなければ、少子化は止められない。各国で大きな選挙があった2024年だが、2025年以降も、私たちの選択は続く。繰り返し求められてきたがまだ道半ばの事柄についておさらいする。 私たちの身の回りの、小さい子供がいる勤労世帯のほとんどは、もう我慢の限界に達している。親たちはどうにかやろうと果敢に挑んできたが、築き上げたケアシステムはもう限界なのだ。 子供が病気になると、あわてて親に電話してその場をしのぐ。会議が長引けば、保育士に電話してあと2時間面倒を見てもらえないかと頼む。 これまでも繰り返し述べてきたが、世帯のひとりのパートナー(伝統的には男)が外で働き、もう片方が家事をおこなう場合、夫の一週間と妻の一週間、計14日の内訳は、5日分の給与労働、9日分の無給労働ということになる。無給労働のいくつかはスケジュール化されたものだが、大部分は裁量労働であるのでライフイベントのために都合をきかせるだけの自由と時間がある。 だが、現在のように共働きとなった場合、この給与労働と無給労働の割合は10:4となる。この裁量時間は信じられないほどに少ないものだ。その結果、子を持つ勤労世帯は、子供と過ごす時間、年老いた両親の面倒を見る時間、お互いを気遣う時間、楽しむ余暇の時間など、やりたいことを全部やる時間が本当に限られてしまう。 それにもかかわらず、信じられないことに現代の働く母親たちのほとんどはこれらを全部こなそうと努力している。日々の日記を見れば、給与労働に従事する母親がほとんどいなかった1950年代、1960年代よりも、さらに子供とコミュニケーションをとり、世話をしている様子が垣間見え、感服するばかりだ。 素晴らしい親、有能な社員、思慮深いパートナー、親思いの子たらんとするなかで、多くの人が苦しんでいる。このような苦闘のときには、不安やメンタルヘルスの問題が生じることもある。