リンダ・グラットン「いまいちど、共働き子育て世帯のためにやるべきことをおさらいしよう」
親にできることは少ない
仕事と家庭について論じる立場として、私は共働き子育て世帯の親たちが直面する課題を知りたいと思った。それと同時に、その責任の所在を考えたい。 その責任は、働く親たち自身にあるのだろうか? 仕事と家庭のあいだにどうにか境目をつくり、その容易に超えられがちな「境目を管理する」ことが親の責任だと説くブログや記事を読んだことのある人は多いだろう。 あるいは、つきっきりで厳しく世話をする「トラ」になるよりは上空で見守る「ヘリコプター」になれ、というアドバイスに従うのもいいかもしれない。 過労状態の親たちに何をすべきかアドバイスをする人は多いが、できることは限られている。英国の母親たちのうち、実に84%が収入や年功序列に育児が悪影響を及ぼしていると考えていることも、何ら不思議ではない。繰り返しになるが、当人たちにできることは限られているのだから。
父親の育休は重要だ
また、ある程度の責任は働く親たちを雇用する企業側にもある。企業側が柔軟性を発揮すれば、親たちの生活やウェルビーイングは大きく改善されるだろう。 出産後の休暇の重要性については論を俟たない。興味深いことに、家庭にとって大きな違いを生むのは父親の育休取得であるという。なぜかというと、父親たちが(子供の世話のための休暇を取るのと同様に)幼い子供との絆を深めることで、将来の関係性をより強固なものにすることができるからだ。さらに重要なことに、そうすることでパートナーとの離婚率も下がるようだ。 以上のように、責任の割り当てに関して言えば、企業トップはフレキシブルな労働形態と父親の育休取得を後押しするべきことが明白だ。米国の場合、この分野について政府の規制がゆるやかであるにもかかわらず、すでに一部の企業は責任に基づいた行動をしている。たとえば、マイクロソフトは、業務がプラン通りに進まなかった場合でも150時間の保育を補償するし、グーグルは本社内に保育所を設置している。
Lynda Gratton From The Times