大平洋金属とミレッソが包括提携、八戸にベリリウム製造パイロットプラント整備。27年度の本格稼働目指す
大平洋金属(社長・青山正幸氏)とミレッソ(代表取締役CEO・中道勝氏)は25日、包括的業務提携契約を締結し、大平洋金属の八戸製造所(青森県)内にベリリウム製造のパイロットプラントを整備すると発表した。ベリリウム製造・販売事業および低温精製技術のプラットフォーム事業化に向け、両社が有する経営資源やノウハウを共有する。パイロットプラントの生産能力は年1トン規模で、化学処理とマイクロ波加熱の複合技術を用いた新たな低温精製技術の実証を行うとともに、27年度中にベリリウム生産を本格稼働し、ベリリウム製品の販売開始を目指す。 ミレッソは、量子科学技術研究開発機構(QST)認定の核融合スタートアップ。今回のパイロット実証の結果を踏まえ、核融合エネルギーを実証する原型炉・商用炉の建設が本格的に進む2030年代初頭に、ベリリウム生産年100トン規模の量産プラントを建設することを目指している。 同日開いた記者会見で大平洋金属の青山社長は「ミレッソとは、これまでも低温精製技術を活用した製錬技術の研究で支援を受けていた関係もあり、今回の提携に至った。ベリリウムは核融合発電やベリリウム銅に必要な金属で今後の需要拡大が期待できる。支援体制を整え、両社が軸足を置く青森県を拠点にベリリウムの安定的で低価格での供給を目指していく」と述べた。 業務提携では、八戸製造所で原料倉庫として使っていた建屋内にパイロットプラントを設置する。大平洋金属は人材や施設、製錬事業のノウハウなどを提供し、ミレッソは低温精製技術や技術知財などを提供する。ミレッソの中道CEOは「低温精製技術はラボレベルでは確立しているが、スケールアップしたプラントでの実証を進めるに当たって大平洋金属が有する大型プラントの運営・施工、安全管理などの経験・ノウハウでの協力に期待している」と話した。 従来のベリリウム精製では、難溶解性のベリリウム鉱石(ベリル)の溶解工程で2千度の高温熱処理が必要なことに加え、その後も複数回の高温加熱処理が必要なため、大量のエネルギー処理とCO2排出が課題だった。これに対し、ミレッソの低温精製技術では300度の低温かつ常圧でベリルを容易に溶解できるため、プロセスの低コスト化と省エネ化を実現できる。同技術は従来技術に比べコストは70%以上、温室効果ガス排出量は90%以上削減できるという。 核融合炉では、中性子増倍材のベリリウムが炉1基に対して約500トン必要と言われている。だが、現状では世界のベリリウム生産量は年間約300トン程度で、価格も高価なため、ベリリウムを安価に安定確保することが核融合炉を実現する上で課題となっている。