「こんな品種があったのか!」プロも魅了されるクンシランのおもしろさと、未来のガーデンプランツへの期待
『趣味の園芸』2024年4月号からスタートした新連載「私の植物偏愛記」。その初回では、バラの専門家として知られる河合伸志さんに、サクラへの愛を語っていただきました。 じつはバラやサクラ以外にも、モクレン、ツバキ、スイセン、クレマチスなど、ありとあらゆる植物を愛好する河合さん。自らに歯止めをかけるため「庭に植えられる植物だけ」と決めているそうですが、ついつい洋ランや熱帯植物などにも手が伸びてしまうそう。 みんなのクンシランの写真 ウェブだけで読めるこの「こぼれ話」では、ハウスを借りて自ら交配も手がけているというクンシランについて語っていただきます! 河合さんのディープなクンシラン愛をどうぞお楽しみください。
そもそも、「クンシラン」とは?
クンシランは、ヒガンバナ科クリビア属の多年草です。名前からよく誤解されますが、ラン科ではありません。みなさんがパッとイメージされるのは、こんな花ではないでしょうか。 これはクリビア・ミニアタといい、「クンシラン」として主に出回っているのはこの種です。正確にいうと、「クンシラン」はもともとクリビア・ノビリスの和名で、ミニアタには「ウケザキクンシラン」という和名がついています。
細かい話はひとまずおくとして、まずはこちらを見てください。 私が栽培している株をいくつか集めてみました。オレンジ色の花のイメージが強いと思いますが、これだけ花色があるのです。ほかにも、白(クリーム色)や黒(濃赤)、茶色やゴースト(脱色)などもあります。色だけでなく、八重咲きや斑入り葉(下写真)などもあり、蒐集しがいのある植物だともっと知ってほしいです。
河合さんが栽培する斑入りの株。「曙斑入り」や「タイガー」と呼ばれる個性的な斑もある。
河合さんを魅了した'ヒラオ'
私がクンシランの蒐集にのめり込むきっかけとなったのが'ヒラオ'というグリーンの品種です。ときどき、「ヒラオ・グリーン」として流通することもあります。 初めて見たとき、「こんな品種もあるのか!」と衝撃をうけました。 'ヒラオ'は実生でふやされる品種のため、白っぽい緑や黄色っぽい緑など色幅があります。咲き始めは緑色でも、花弁全体が徐々に黄色くなり、緑色は花弁の一部にしか残らない個体が多いです。私の'ヒラオ'(上写真)は緑色の発色が特によい個体で、最後まで緑が抜けません。品種名は園芸の大家であった平尾秀一さん(故人)に由来しています。