「不当廉売」の結果は?アメリカ・ボストンで〝訳あり商品〟の地下鉄に乗車 脱線やバッテリー爆発も、中国メーカー製の乗り心地は…「鉄道なにコレ!?」【第63回】
マサチューセッツ湾交通局(MBTA)は発注を計404両に上積みし、中国中車の受注額は計8億7千万ドルになった。オレンジライン用の1400系は2019年、レッドラインの1900系も21年にそれぞれ登場したが、トラブルが相次いだことで知人のMBTA職員は「一見すると銀色に輝いている車体は、一皮むくと腐っている」と揶揄した。 オレンジラインで運行を始めた1400系は2019年に営業運転を始めて早々に、運転中に扉が突然開いたり、床下から異常音がしたりする問題が起きて出ばなをくじかれた。21年3月には走行中に脱線し、幸いにも負傷者の報告はなかったものの全ての中国中車製車両の営業運転を約5カ月にわたって停止した。 2022年5月にブレーキ部分のボルト取り付けが不適切だったことが発覚し、続いて22年6月に車庫に停車中だった車両のバッテリーが過熱して爆発するトラブルが発生。中国中車製車両の営業運転を再び見合わせる事態となった。
地元メディアのボストン・ヘラルドは2023年5月、中国中車が新造車両を納入する前のMBTAによる点検で台枠にコネクタが垂れ下がっていたり、装飾が不完全だったりといった不備が相次いで見つかったと報道。MBTAの技術部門幹部は中国中車の生産担当幹部に抗議文を送り、「なぜこのようなプロセスの問題が起こり続けるのか?」と問うた。 MBTAは納期が大幅に遅れていることにも不満を募らせている。2024年初めの時点で導入されたのは1400系が106両、1900系が14両の計120両と、404両の納入を完了予定だった23年9月を過ぎても3分の1に満たない。 ▽実際に乗車すると…けたたましく耳障りな電子音 果たして中国中車はどんな乗り心地なのかを確認すべく、ボストン中心部のステート駅からボストン近郊の住宅街にあるオークグローブ駅まで利用した。先頭を真っ黒にした1400系はどんくさい印象で、川崎重工が製造を進めているニューヨーク地下鉄の新型車両「R211」(本連載第48回参照)がLED照明を駆使して近未来感を醸し出しているのとは大違いだ。