「不当廉売」の結果は?アメリカ・ボストンで〝訳あり商品〟の地下鉄に乗車 脱線やバッテリー爆発も、中国メーカー製の乗り心地は…「鉄道なにコレ!?」【第63回】
▽「赤字受注は間違いない」安すぎる応札額 ハーバード大やマサチューセッツ工科大(MIT)などの大学が立地し、製薬・バイオテクノロジーなどの研究拠点も集積する学術・研究都市として名高いボストン都市圏。この地域の公共交通機関を担うマサチューセッツ湾交通局(MBTA)は、地下鉄と路面電車を計5路線走らせており、うち地下鉄路線「オレンジライン」と「レッドライン」の老朽化した電車の置き換え用車両の発注先を選ぶ入札を2014年に実施した。 オレンジライン用車両「1900系」とレッドライン用「1400系」の計284両の製造で4社が競い、5億6660万ドル(現在の為替レートの1ドル=155円で約880億円)とダントツの安値で白羽の矢が立ったのが中国中車に合併前の前身企業だった。2番目に安かった韓国の現代ロテム(7億2060万ドル)を約21%下回った。 中国中車の応札額は、川崎重工の9億490万ドルより約37%安く、フランスのアルストムが2021年に買収した旧ボンバルディア・トランスポーテーションの10億801万ドルを約44%下回った。
敗れた川崎重工の関係者は「中国中車側の応札側は安過ぎ、赤字受注なのは間違いない」と打ち明ける。根拠として「1400系と1900系は車両の大きさが異なり、しかも発注した車両数が少ないためコストが高く付く案件だからだ」と指摘する。 確かに全長は1900系が約21・3メートルなのに対し、1400系は20メートルとJR在来線の大都市圏の通勤電車と同じだ。全幅も1900系が3メートル余りだが、1400系は約2・8メートルにとどまる。しかも中国中車は地元の雇用創出のためにマサチューセッツ州に組み立て用の工場を建設し、多額の初期投資を伴う。 別のメーカー関係者は「国有企業の中国中車は、中国政府から補助金を受け取れる立場にあり、のどから手が出るほど欲しかったアメリカでの納入実績を手に入れるために赤字受注も辞さなかったのだろう」との見方を示す。 ▽走行中に開く扉、脱線、バッテリーの爆発「一皮むくと腐っている」