雪の富士山でオーバーツーリズム深刻化、地元頭抱える…渋滞・ポイ捨て・私有地立ち入り
富士北麓地域の自治体で、オーバーツーリズム(観光公害)がさらに深刻化している。ようやく冠雪した富士山を撮影しようという外国人観光客も多く、絶景スポットは人の波であふれている。渋滞やゴミのポイ捨てなどの問題も悪化しており、自治体側も対策に動いているが、抜本的な解決策がなく、担当者らが頭を抱えている。(木村誠) 【写真】「コンビニ富士」で迷惑行為続き、店の前にも新たな柵を設置へ
「白くて美しい富士山を見られてラッキー。これを見たくて初めて来日しました」。9日午前、山梨県富士吉田市の新倉山浅間公園にインドから家族で訪れた観光客(54)は、夢中でスマホのシャッターを切っていた。
富士山と五重塔が一望できる眺めが人気となっている同公園。紅葉シーズンは終わったものの、展望デッキは撮影客であふれ、身動きできないほどだ。
公園周辺は閑静な住宅街。もともと住民の憩いの場だったが、絶景がSNSを中心に話題となり、観光客らが押し寄せるようになった。ポイ捨てや私有地への立ち入りのほか、曜日や時間を問わず慢性的な渋滞に悩まされている。
来園者数は、今年4月から11月末までで102万人を記録。11月は14万7151人で、昨年同月から1万人増えて過去最多だった。このままのペースで推移すると、昨年度の年間約130万人を上回る見通しだ。
市では周辺に車両の誘導員を最大約20人配置。12月の補正予算案には約1900万円を計上し、誘導員を増やす考えだ。更に周辺には臨時を含め計8か所の駐車場を開設しているが、改善は見られず「根本的な解決は難しいのが現状」(市関係者)という。
対策費もふくれ続けており、昨年度は公園の誘導員やトイレ清掃などに約8000万円を支出したが「今年度はさらに増える可能性がある」(市担当者)という。市では費用を賄うため、公園駐車場の有料化も検討しているが、別の担当者は「対策は自治体でやるには費用がかかりすぎる。外国人向けにマナー面を観光庁でPRするなど、国も対策に動いてほしい」と話している。