「NATURE&NURTUREが噛み合ってこそ、選手育成は機能する」反町GMが乗り出した清水アカデミー改革の全貌(前編)
長友、吉田、遠藤は6項目中4・5以上をクリア
こういった意識の高さは、今年3月まで日本サッカー協会(JFA)で技術委員長を務めていた経験から来る部分も大だろう。JFA時代も反町GMはワールドカップや五輪などの世界大会、アジア予選などがあるたびにパワーポイントで報告書を作成。可視化できるように努めてきた。 日本代表が98年フランスW杯に初出場してから26年が経過しているが、これまでの代表の足跡や収穫・課題が事細かく書面に残されているかというと、そうとも言い切れない部分がある。筆者の経験だと、年代別代表の過去の招集メンバーリストを探そうとすると、当時のニュースリリースを1枚ずつ見なければならない状況で、データ化されていなかったことに驚かされたことがあった。 ゆえに、反町GMのように「可視化」「共有化」を重要視する人材は貴重。もちろん清水というクラブにとってもプラスになっていくはずだ。 上記の『選手を見極める6P』に話を戻すと、反町GMが携わった長友佑都、吉田麻也、遠藤航といった選手たちは、6項目中4・5以上はクリアしていたようだ。 「北京五輪代表で指導した佑都を例に挙げると、ボール保持能力以外は全て満たしていました。麻也も性格、均整、身体能力、潜在能力、ボール保持能力は全てあった。なかったのはスピードと突破力くらいですね。 航は湘南ベルマーレで監督していた時に17歳でトップデビューさせた選手ですけど、背筋がピンと伸びていて均整が取れていたし、性格もブレない強さを備えていた。身体能力の部分でそれほど速さがなく、突破力も足りなかったけど、常にビビることなくボールを受けられる堂々としたところもあって、潜在能力の高さを強く感じました。 そうやって育成年代から成長し、A代表になり、海外で活躍した選手たちはもともとのNATUREの部分が高いだけでなく、NURTUREの部分でも成長度が高かった。我々のアカデミーでもそういったタレントを数多く輩出していくことが大事なんです」 反町GMの話を直々に聞いた伊達倫央育成本部長は「ソリさんの話は現場に即しているので非常に説得力がありますし、大切なことを再認識させてくれる。『6P』を改めて明確に示してくれたことで、アカデミーのコーチもやることが明確になったと思います」と話していた。 まずは大前提を頭に入れること。そこが清水の育成改革の第一歩と言っていい(後編に続く)。 取材・文●元川悦子(フリーライター)