アマゾン配達員がまさかの”大号泣”…「他人をねぎらう伝統」が垣間見えるドイツの”心温まるクリスマス”をご紹介
おしゃれに老いる、素敵に老いる、小さくて快適な暮らしのためのスッキリする断捨離。ところでお金は?親の介護は?お墓はどうしよう? 【漫画】くも膜下出血で倒れた夫を介護しながら高齢義母と同居する50代女性のリアル 日本でしばしば話題になる「老い支度」を、ドイツ人はどうしているのか?合理的で、節約を重んじるドイツ人の「老い」との向き合い方について、日本とドイツにルーツを持つサンドラ・ヘフェリンが、インタビューをもとに綴る実用エッセイが、来春、講談社より刊行される。『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』の制作過程を紹介しながら、取材こぼれ話をお届けする。 『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』連載第2回 『「気づいたら父親は死に、母親は高齢者…」…“日本人”と“ドイツ人”のハーフである筆者が「老い」のリアルに迫る!』より続く
ケチで元気なおじいちゃん
『ドイツ人は飾らず、悩まず、さらりと老いる』のインタビューでは、節約に命をかけるドイツ人高齢者の「ケチケチ話」もずいぶん出ました。たとえば、91歳になる祖父の話を教えてくれたのは、ベルリン在住のタニアさん。 「おじいちゃんはケチ。今後のこともあって、家族はお金のことも色々と知りたいところだけれど、自分の貯金額を絶対に言わないの」 タニアさんの祖父母は、高齢ながら2人で暮らしています。ベルリンから車で1時間ぐらいの村の1軒家で、庭の手入れを楽しんでいるのだとか。 節約のため、冬も暖房を入れずに「暖炉のある部屋だけで2人で過ごす」のだそう。暖炉で燃やす薪は買ってくるのではなく、祖父が近所の森で切ってきます。自分で斧を持ち、木を切って暖炉に入れる……考えてみればすごい体力の91歳です。
失われつつあるドイツの文化
「でもちょっと困った話もあるの。ドイツではクリスマスの時期になると、荷物を家まで持ってきてくれる配達員にチップを渡す習慣があるでしょ。とても素敵な習慣だと思うのだけれど、ある年、おじいちゃんは郵便料金の値上げに腹を立てて、なんとチップをあげなかったのよ。『おじいちゃん、郵便の値上げは家に荷物を持ってきてくれる配達員のせいではないよ!』と説明したんだけど……」 ドイツはキリスト教の影響が強く、クリスマスの時期には色んな人をねぎらってチップを渡すため、財布の紐も緩くなりがちですが、どうやらそれはタニアさんの祖父には当てはまらないようです。 そういえば私は十代の頃、クリスマスのシーズンにミュンヘンの地元紙を配達するアルバイトをしたことがありますが、バイト代よりもチップが多くて非常にありがたかったことを覚えています。 ただし、コロナ禍でオンラインショッピングが増え、自宅に物を届けてもらうことがいわば「当たり前」となったため、最近はアマゾンの配達員にチップを渡さない人も増えたのだそうです。昨年のクリスマス、タニアさんがアマゾンの配達員にチップを渡したところ、その人は感激のあまり泣いてしまったといいます。それぐらいドイツでも「チップを渡すこと」は少なくなっているのです。