アマゾン配達員がまさかの”大号泣”…「他人をねぎらう伝統」が垣間見えるドイツの”心温まるクリスマス”をご紹介
伝統の影を残すクリスマス
時代の変化はあるものの、キリスト教徒が多いドイツで、クリスマスが重要なことは変わりません。私が育ったミュンヘンでは、まず中心部マリエンプラッツの市庁舎前に大きなツリーが飾られますし、デパートのショーウインドウもクリスマス一色に。 このシーズン、文具なども売っているドイツの大型書店でよく見られるのは、プレゼント用のリボンのコーナー。クリスマスっぽいデザインが並びます。近年、環境保護に力を入れているため、クリスマスのプレゼントを「紙」で包むということが少なくなってきています。代わりにモノに直接リボンをつけて、プレゼントすることがよくあります。
クリスマスプレゼントは「現金」
紙は全て省くのかといえばそうでもなく、クリスマスカードを贈る習慣もまだまだ残っていて、モチーフは自然に囲まれた1軒家、そして雪景色……。ドイツらしさ満載、と言ったところでしょうか。 ところでこのクリスマスカード、「GELDGESCHENKKARTE」いう現金をはさむことができるタイプのものもあります。意味は、「お金のプレゼントが入ったカード」。昔のドイツでは現金でのプレゼントはどこかタブー感があったのですが、近年は「こういうのもアリ」です。 もう1つ、この時期のドイツの家庭でよく見られるのがアドヴェント(待降節:Advent)にまつわるもの。クリスマス4週間前からイブまで、まずはロウソクを用意します。4週間前から日曜日ごとにロウソクを1本、2本、3本……とつけていくと、クリスマス当日には4本のロウソクの灯が楽しめるというわけです。
地方で味はさまざま!ドイツ伝統の「冬のおやつ」
日本でも最近、よく食べられるようになったシュトレン(Stollen)も、アドヴェントの時期に食べるドイツの伝統的なクリスマス菓子です。ちなみに「シュートレン」と伸ばす表記も見かけますが、ドイツ語だと「盗む」という意味を連想させるので、「シュトレン」で! ブランデー漬けのドライフルーツがたっぷり入った硬いパンの表面には、白い粉砂糖がまぶされています。これを薄くスライスして少しずつ食べながら、クリスマス当日を待つのです。味が少しずつ変わっていくのもまた、楽しみなものです。 シュトレン発祥の地とされるのが、ザクセン州のドレスデン。大昔は水、小麦粉、酵母といったものがメインの質素なものであり、1491年に当時のローマ法王の許可が出て以来、シュトレンにバターを使うことが許されました。ドレスデンのクリスマスシュトレン(Dresdner Christstollen)が、「クリスマスの前のご馳走」となったのはその頃です。 何をもって「ドレスデンのクリスマスシュトレン」とするかは、ドイツ・クリストシュトレン組合(Dresdner Stollen e.V.)がバターやドライフルーツの割合など、レシピを厳しくチェックしています。 私はミュンヘンで育ったこともあり、バイエルンのフレッシュチーズ(Quarkクワルク)、アプリコット、ピスタチオの入ったシュトレンが好きです。クワルクはサワーミルクを乳たんぱく質が疑固しきるまであたためたあとに漉して作られるもので、ヨーグルトよりも低脂肪、高たんぱく質でヘルシーです。 このように、レシピは地方によって違いはありますが、みんな適当に買って楽しんでいます。特に「地元の誇り」などもなく、ミュンヘンの人もドレスデンのクリスマスシュトレンを食べています。保存食ですから、クリスマス前後だけではなく、冬のおやつとしても味わうのがドイツ流です。 本書のインタビューのために11月のミュンヘンを歩きながら、ツリーやお店を見たり、ウインドウデコレーションを楽しんだり。お土産にいろいろな「クリスマスのお茶」を買い、日本に持って帰りました。トランクの中でつぶれないように、靴箱に入れて! こんなドイツのこぼれ話を交えつつ、「飾らず・悩まず・さらりと老いる」ドイツの知恵を紹介していきます。
サンドラ・ヘフェリン(エッセイスト)