建築家が作るクロワッサン!? 上林剛典による“まちのパン屋”〈PLAT〉が駒沢公園前に移転オープン。
オフィス兼クロワッサン専門店PLATが駒沢公園に移転オープン。上林剛典の語る、理想の建築事務所像について聞きました。 【フォトギャラリーを見る】 三軒茶屋のクロワッサン専門店として人気を博した〈PLAT〉が駒沢公園のすぐそばに移転オープンした。入口から向かって右に広がる店舗は、左側がベーカリーカフェのイートイン、右奥が建築事務所として使用される “まちにひらいた” 構造。異色の2業態を運営するPLATの代表で建築家の上林剛典に話を聞いた。 「建築は、街や人のことを常に考える仕事なのに、考える場所が窮屈だなと感じたんです。もっと街の空気や暮らしを感じて仕事をしたいと、三軒茶屋の店を始めました。せっかく店を始めるのなら、作品として突き詰めたものを作ろうと、クロワッサンを専門にしました。当時、時間の蓄積を記憶する “建築” と、時間を帯びてパンが膨らむ “発酵” にシンパシーを感じていたこともあって、ビビッときたんです」
しかしビジネスが成長するにつれ、PLATはオフィスとベーカリーの営業が次第に分断されていった。「これでは街の空気を感じられない」と、さらなる街との繋がりを求め移転を決意。現在のPLATには自分たちの手でリノベーションを加え、建築が経験してきた歴史の跡があえて残されている。 「どんな施工がされていたのかによって剥がし方が変わるので、電動ケレンで斫ったり、研磨機で削ったり磨いたりすると、出てくる躯体のテクスチャーや表情が違うんです。元々の躯体はすべて同じ見た目だったはずなんですけどね。建築本来の姿とそこに蓄積していく歴史をデザインとして残しているのが、PLATの内装です」
PLATには近隣の住民が途切れることなく訪れ、中には愛犬と共に利用する人も。オープンから間もないが、すでに地域の人々の生活の一部として溶け込んでいる。 「この辺りに住む方々は、駒沢公園のことを “庭” と呼ぶんです。生活空間のスケール感がとても大きく、“街に住む” ということを実践しているのを目の前にして、今はこの店を “街のリビングルーム” にしたいと思っています」
〈PLAT〉
東京都目黒区八雲5-19-7 たか乃羽マンション。7時~17時30分LO。火曜・水曜休。
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