那須川天心の妹・16歳の梨々がRISE女王ベルト奪取失敗に号泣、そして兄は叱った!
“神童”那須川天心(20)の妹、梨々(16、TEAMTEPPEN)が5日、後楽園ホールでキックボクシングのRISE QUEENアトム級(46キロ以下)王座決定戦に挑んだが、ベテランの紅絹(35、NEXTLEVEL渋谷)に0-3の判定で敗れリング上で号泣した。兄の天心が6戦目で戴冠したスピードベルト奪取記録の更新はできなかったが、まだ高校2年で、これがプロ4戦目。大善戦とも言えるが、セコンドについてサポートした兄の天心は「(キックを)舐めている」と厳しい言葉で叱咤した。
ローキックを浴びて足は内出血で真っ赤
試合終了のゴングが鳴った瞬間の表情に明暗が現れていた。 いきなり泣き顔になった梨々とガッツポーズをした紅絹。年齢差19歳の3分×5ラウンドの赤いベルトを巡っての激闘は判定決着となった。割れるような大声援が交錯した最終ラウンドが嘘のように静まり返るホール。セコンドについた兄の天心は「ドローかな」と思っていたという。 「1、2、3(ラウンド)が6-4。4(ラウンド)が8-2くらいで取られて最後も10-0で取られた」 ジャッジペーパーが読み上げられる。一人目は「49-48、赤、紅絹!」、そして2人目も、「49-48、赤……」とアナウンスされた瞬間に梨々は、泣き崩れた。 序盤は梨々のペースだった。 「ガードを固めてプレッシャーかけろ!」 「当ててるのはお前だけだぞ」 天心の声に勇気づけられながら攻め込んだ。プレスをかけて前蹴りで距離を作り、ワンツーからキックのコンビネーション。右のミドルがめりこむシーンもあり手数で圧倒した。このラウンドの終盤では、天心ばりの三日月蹴り、後ろ廻し蹴りまで披露し会場を沸かせた。 1ラウンドのインターバルでは天心は自らジェスチャーをまじえ「右のガードがこう上がるから空いた右のボディを狙え」と熱烈に指示した。6年前に、この赤いベルトを紅絹と争って腰に巻いた女子キック界の“レジェンド”神村エリカも「1、2ラウンドを見て(紅絹が)負けちゃうのではとヒヤヒヤした」という展開である。 紅絹は梨々の持つポテンシャルに手こずっていた。 「1ラウンドからいきたかったがいけなかった。距離感がうまく、すかすのもうまい。いこうとしたとき足をあげたりして潰された。前後の動きも読まれ下げられた。1、2、3はやばかった」 だが、そこはプロ56戦の百戦錬磨である。 3ラウンドに入ると直前になって変更したという作戦に切り替えた。サイドの動きを加え、体の向きを斜めにしパンチに角度をつけて、梨々の距離感に誤差を生じさせ、左のカウンターを狙った。そして何より強引に前へ出て“肉弾戦”を仕掛けたのである。 「とにかく潰せ、潰せ、体力を削ろう、心を折ろうと、ゴリゴリいった。根性だけ」 4ラウンドには、消耗の目立つ梨々をつかまえて膝蹴りを連発して、レフェリーにイエローカードを出されるほど。ボディブローも使い、流れは、一転、紅絹へ傾いた。 「後半、梨々選手の顔が曇ったのがわかった。私は粘り強いばばあなので(笑)」 最後のインターバルでは天心の口調がさらに強くなる。 「最後だぞ!」。この第5ラウンドを支配した者がベルトを巻くのだ。那須川家のDNAを継ぐ者だから負けん気も勝負を読む才能もある。 ゴングと同時に勝負に出た。猛ラッシュ。だが、3分は短いようで長い。的確なパンチとキックで押し返され、左のローを浴びて、その足は、内出血で真っ赤になった。途中、スリップダウンがあったほど踏ん張れなくなった梨々は、もう気力だけで応戦していた。攻め込まれたまま、最終ラウンドのゴングを聞き、泣き顔になったのは勝負しきれなかった後悔の涙だったのだろう。 試合後、号泣してロッカーに帰った妹に天心は容赦なかった。 「(負けて)当たり前だろ。勝てるわけないよな」 兄ゆえの辛辣なダメ出し。 涙で目を腫らした梨々に代わって天心がインタビューに応じた。