【日直や掃除当番に世界が注目!?】エジプトの教育改革を支える日本発祥の「特活」:現地教員が福井で研修
24年2月には10期生として、EJSの校長・副校長らが来日。福井市内を中心に小中学校や幼稚園の様子を視察するなど研修に臨んだ。 取材当日には、福井大学教育学部附属義務教育学校の中等部を参観。生徒はグループを作って、自らが課題を見つけて解決を目指す「協働探求」に取り組んでいた。
探求は日本では2022年から高校の必修科目になっている。教員は自分自身が経験していない科目を授業するため、手探りで指導方法を確立していかなければならない。 EJSの教員も自分が受けたことがない日本式教育を教える立場にある。そこで、彼ら自身が協働探求するカリキュラムを組んだと、福井大学の柳沢昌一教授は言う。その一環として、日々の研修の感想や課題についてグループディスカッションを重ねている。
「日本式教育では特活だけが重視されがちだけれど、授業を参観するだけでは『エジプトの子どもとは違うから参考にならない』で終わってしまう。研修の本質は、子どもたちが主体性を育むプロセスを知ってもらうこと」との考えからだ。 日本の学校現場で学んだことをエジプトでどのように生かすのか。それをイメージする上で役立っているのが、これまでの研修生が残したリポートだ。また、修了生とオンラインで対話し、いかにエジプトで実践しているかを聞く機会も設けている。
「先輩たちが悪戦苦闘しながら、何を学び、どう教育現場で展開していったのかを理解した上で、自身の探求を深めてもらっている。そして最後には、次の研修生のために自分もリポートを書く。こうした積み重ねのおかげで、研修生のレベルは回を追うごとに高まっている」
EJSの成功はモデルケースになり得る
柳沢教授ら福井大学の教職員は5月にエジプトを訪問し、研修を終えた教員のフォローアップのためにEJSを回った。現地で授業参観や教員の研究会に参加したヤスミーン・モスタファ准教授は、大きな手応えを感じたという。 「以前のエジプトでは、校長や副校長らマネジメント側は現場の教員と壁がある印象でした。今は信頼し合って、学校づくりにチャレンジしようという雰囲気に変わっています。先生たちの変化は子どもたちにも良い影響を与えて、自由に意見を出し合える授業ができています」 EJSの子どもたちは総じて学校行事への参加意欲が高く、準備段階から「休みの日でも学校に行きたい」「家に帰りたくない」と言うほど情熱を注ぐ。主体性や責任感も育まれ、家庭でも進んで部屋の掃除や食後の片づけをすると、保護者から喜びの声が寄せられているそうだ。