宇都宮LRT、2024年も大ヒットのワケ! 累計乗客数ついに「600万人」突破、成功要因を今さらながら徹底解剖する
70年ぶり新路面電車の経済的成功
開業から1周年を迎えた栃木県の新しいローカル鉄道・宇都宮ライトレール(宇都宮LRT)の勢いが止まらない。 【画像】「なんとぉぉ!」 これが50年前の「宇都宮駅東口」です! 画像で見る(15枚) 2023年8月25日の開業以来、利用客数は事前の予想を大きく上回るペースで増加。2024年6月には初年度の純損益が約5700万円の黒字となったと発表された。地方私鉄で開業直後に黒字化するのは非常に珍しいことだ。 令和の時代にローカル線の新規開業自体が珍しいなか、 「新たな路面電車」 の開業は約70年ぶりとあって、宇都宮LRTは多くのメディアでも注目を集めている。LRTって都電みたいなものだろうと思う人もいるかもしれないが、宇都宮LRTには他の路面電車とは異なる新しい特徴が数多くある。 今回は、宇都宮LRTがどんな特徴を持ち、どれほど凄いのかを初心者にも分かりやすく解説する。
日本初の全線新設LRT路線
まずLRTとは何か、そして宇都宮LRTがどんなものかを説明する。 LRTは「Light Rail Transit(ライト・レール・トランジット)」の略で、路面電車を中心とした中小容量の鉄軌道路線を指す。主に「LRV(Light Rail Vehicle、ライト・レール・ビークル)という超低床車両を使用して運行される。 宇都宮LRT線(宇都宮芳賀ライトレール線)は、JR宇都宮駅に隣接する「宇都宮駅東口電停」から、宇都宮市東部にある芳賀町の工業団地「芳賀・高根沢工業団地電停」までの約14.6kmを結ぶLRT路線で、2023年8月に開業した。総事業費は約684億円。路線の大部分は道路上に敷設された併用軌道で、いわゆる路面電車だ。 LRTは欧州を中心に普及しており、日本国内ではJR路線跡をLRT化した「富山ライトレール」(富山LRT、富山地方鉄道富山港線)があるほか、既存の路面電車でも超低床型LRVの導入が進んでいる。 しかし、全線が新設されたLRT路線は宇都宮LRTが日本初となる。宇都宮都市圏では、市内中心部と郊外の工業団地を結ぶ幹線道路の混雑が深刻な問題となっており、その解決策のひとつとしてこの路線が生まれた。 運営主体は地元自治体やバス会社などが出資する宇都宮ライトレール株式会社(同市)で、路線の愛称は「ライトライン」。これはLRTのLightに加え、雷の多い宇都宮市の愛称「雷都」にも由来している。また、軌道や電停などのインフラは自治体が保有する公設型上下分離方式を採用しており、これにより事業者の経済的負担が抑えられている。