宇都宮LRT、2024年も大ヒットのワケ! 累計乗客数ついに「600万人」突破、成功要因を今さらながら徹底解剖する
隠れた宇都宮愛の表現
宇都宮LRTの塗装やラインカラーは鮮やかな黄色で、目立ちやすさだけでなく、宇都宮の愛称・雷都にちなんだ雷の稲妻をイメージしたものだ。 実は、車内外には「隠れ宇都宮」や「隠れ栃木」の要素がいくつも盛り込まれている。 例えば、HU300形の車内には雷模様や宇都宮名産の石材・大谷石をモチーフにしたデザインが施されており、停留所には本物の大谷石も使用されている。 車内外を見渡しながら、宇都宮への愛を感じてほしい。
多彩な沿線風景が魅力
宇都宮LRTの特徴のひとつは、沿線風景の多彩さだ。 始発駅である宇都宮駅東口・宮みらいエリアは、開通に合わせて複合商業施設などが整備された新しい街並みが広がっている。電車はその街並みを出発し、しばらくはオフィスビルやビジネスホテルが並ぶ繁華街を通るが、10分ほど進むと景色は一変する。 大型ショッピングセンターや大学が立ち並ぶ住宅街を抜けると、田園地帯へと変わり、再び大学や大型スポーツ施設、工業団地、ニュータウン、さらには地方都市郊外のロードサイド商店街を通過し、宇都宮市から芳賀町に入ると再び工業団地が現れる。 この多彩さが、宇都宮LRTの成功のカギとなっている。沿線にはさまざまな施設があり、そのため多様な利用客や利用形態が生まれており、通勤時間帯だけでなく、平日や休日にも賑わう路線となっている。
LRTとバスのシームレス接続
宇都宮LRTは、宇都宮市中心部と沿線のさまざまな施設を結ぶために造られた。これは、宇都宮都市圏が目指す「お団子と串の都市構造」における「串」の役割を担うためだ。 お団子と串の都市構造とは、拠点駅や学校、大型商業施設、大工場などの都市機能の集積を団子、それらを結ぶ電車やバス路線を串に見立てた考え方である。宇都宮LRTは、都市圏内のさまざまな団子を繋ぎ、さらに支線となるバス路線などを伸ばすことで公共交通の利便性を広げることを目指している。この取り組みは、富山ライトレール(富山地方鉄道富山港線)など、他の都市でも実施されている。 宇都宮LRTでは、電車とバスの対面乗り換えを便利にするための珍しい工夫がされている。5つの電停に設置されたトランジットセンターでは、電車のホームの対面にバスやタクシーが停車し、無段差で乗り換えができる。さらに、電停にはパーク&ライド用の駐車場や駐輪場が併設され、一部は無料で利用できる。 このトランジットセンターを利用すれば、例えば、マイカーで郊外のトランジットセンターがある電停まで行き、そこからLRTに乗って宇都宮の中心にある餃子店へ向かうといったスタイルの移動が可能となる。逆に、郊外の飲食店に行く場合、JR宇都宮駅に降り立つと、東京では駅チカにあることが少ないロードサイド型のチェーン店(例えば「ラーメン山岡家」「ステーキ宮」「レストランジョイフル」など)にもLRTで簡単にアクセスできる。 トランジットセンターがある電停を利用する際は、バスが電車に横付けされる様子をぜひ観察してほしい。