宇都宮LRT、2024年も大ヒットのワケ! 累計乗客数ついに「600万人」突破、成功要因を今さらながら徹底解剖する
「無段差乗降」の革新性
ここからは、宇都宮LRTと従来の路面電車との違いについて見ていこう。 路面電車というと、低いホームからステップを使って乗車するイメージが強いだろう。現在、東京都電や東急世田谷線では、バリアフリー対応としてホームが高くなり、鉄道のように高いホームに上がって車両に乗り込む形となっている。 一方、宇都宮LRTでは、すべての列車がバリアフリー型の超低床車両「HU300形」(HUは芳賀、宇都宮の頭文字)で運行されており、低いホームからスロープを使って無段差で乗降できる。車内もフルフラットで、貫通路を含めて段差がなく、誰でも快適に乗り降りできる構造になっている。 また、宇都宮LRTの特徴的な点は、混雑対策として採用されている独自の方式だ。宇都宮LRTはワンマンカー(車掌なし)でありながら、 「全ドアから乗降可能」 となっている。国内の多くの路線バスや路面電車では、ワンマン運転の場合、運賃が均一で前払いの場合は前ドアから、運賃が変動し後払いの場合は後ドアから乗車し、整理券を取るかICカードをタッチして車内に入るのが一般的だ。そして、降車時は逆側のドアを使うことが多い。しかし、混雑時には乗降口が詰まり、遅延の原因となっていた。 宇都宮LRTで全ドア乗降を実現したのは、独自のICカードリーダーシステムだ。このシステムでは、全てのドアにICカードリーダーが設置されており、乗車時には緑色のリーダー、降車時には黄色のリーダーにタッチする仕組みになっている。初めての場合、タッチする場所を間違えることも考えられるが、緑色と黄色のリーダーは高さと角度が調整されているため、間違えにくくなっている。 また、宇都宮都市圏では2021年から、JR東日本のICカード「Suica」をベースにした地域オリジナル交通系ICカード「totra(トトラ)」が導入されており、宇都宮LRTではトトラをはじめ、Suicaなど全国のICカードが利用できる。トトラを使うと、LRTを含む宇都宮都市圏の多くの公共交通でポイントが貯まるため、頻繁に利用する人にはお得だ。 なお、現金払いの場合は、進行方向の一番前にある運転台近くのドアを使うことになるので、注意が必要だ。