歩夢ちゃん虐待死事件には続きがあった 床下にあった「もう一つの遺体」は一体、誰なのか? 主犯とされた「あおい」の奇妙な人生
法廷に現れた女は、髪が腰の辺りまで伸びていた。毛先は茶髪だが、根元に近い部分は白い。逮捕後に伸びたからだろう。マスクを着け、緑や赤のボーダー柄のセーターに黒いズボン姿だ。 追い詰められた母子が頼った「上品な女性」あおいの驚くべき本性 奇妙な4人暮らし、エスカレートする暴行の末路
女の名は「あおい」。偽名だ。起訴状には本名が記されている。56歳。被告人用の席にとぼとぼとした足取りで向かい、伏し目がちに腰を下ろす。誘導していた女性警官と比べ、小柄だった。 埼玉県本庄市で2022年1月、5歳の男児・歩夢ちゃんが床に投げ倒されるなどの激しい虐待を受けて死亡する事件があった。逮捕されたのは、歩夢ちゃんの母親(32)、あおいと、あおいの交際相手の男。3人と歩夢ちゃんは同居しており、歩夢ちゃんの遺体はこの家の床下に埋められていた。 警察は3月になって捜索し、歩夢ちゃんの遺体を発見した。ただ、警察はこの家でさらに、もう一つの遺体を見つけていた。白骨化した女性だ。一体誰なのか。警察は極秘に捜査を進めた。 実は、あおいは以前にもこの住宅で別の3人と同居していた。後になって、女性はこのうちの1人と判明する。あおいはなぜ、この1人の死を隠したのだろうか。(共同通信=勢理客貴也)
▽養父、彼氏…奇妙な家族関係 過去は、公判で明らかになっている。あおいは2児の母だった。中学を卒業後、ベビーシッターや保育園のアルバイト、家政婦などをしながら子育てをした。後に歩夢ちゃんに対する虐待死の罪に問われたが、自身の子ども2人に対する暴行はなかったという。 本庄市の住宅には2010年ごろから4人で住み始めた。同居したのは、当時交際していたAさん、その母親の高齢女性、あおいの養父だ。 あおいはその後、Aさんの暴力が原因でこの家を出て、SNS「ミクシィ」で知り合った男の社員寮へ転がり込む。ミクシィでは「なかむら・あおい」という偽名で登録。実年齢より20歳近く若いとうそをついていた。 この男は、その後もあおいと生活を共にし、後に歩夢ちゃん虐待死事件で逮捕されている。ただ、警察から聞くまであおいの本名も年齢も知らなかった。 あおいは2015年、本庄市の住宅に戻る。きっかけはAさんが亡くなったこと。養父から「助け」を求められた。Aさんの母親が認知症になり、世話が必要だったためだ。