街クラブ『KAGO』のMARUコーチが語る創設からの15年間(前編)「バスケってもっと楽しいよ」
大きなターニングポイントになった大濠との連携
──大橋選手には洛南高校時代に取材をさせてもらったことがありますが、プレーも取材もとても楽しそうだったのが印象的でした。ご本人の性格ももちろんあるでしょうが、MARUさんの影響も大きかったのですね。 そうですね。1期生たちは本当にどこにでも連れて行って、中学3年生の時には海外にも行かせて。それがきっかけでヒロ(大橋選手)は、日本の大学からたくさん推薦が来ていたのに何のツテもないアメリカの大学に挑戦したんです。あいつと出会っていなかったら、僕もKAGOもここまでなってなかったんじゃないかなっていうくらい良い出会いでした。レッスンを毎回すごく楽しんでくれるし、用意したメニューをその日に全部やってしまうから次の週までに新しいことを考えなくちゃいけなかったし。海樹たちも含めて「こいつらに認められるコーチになりたい」って背中を押してもらいました。今でもそういうマインドは大切だと思っています。 ──ちなみに「KAGO」という名前の由来は? 「籠球」の「籠」から取りました。大阪籠球会のメンバーから「バスケットボールのルールはもともとカゴに入れるところから始まったんだよ」って聞いて、原点という意味を込めたこの名前にしようと。バスケットボールブランド『AKTR』の信頼あるデザイナーにカゴをモチーフにしてロゴを作成してもらいました。 ──これまでの道のりを振り返って、「大変だったな」というタイミングはありましたか? 全体的には良い感じで進んで来られていると思いますが、立ち上げ当時はバスケスクールやクラブチームがほとんどない時代だったので、世間の風当たりはそれなりにきつかったです(笑)。そういった認識が変わっていくきっかけになったのが、福岡大学附属大濠高校のスキルコーチに就任したことでしたね。 ──全国トップクラスの強豪高校がスキルコーチを招聘するというのは、当時としては非常に斬新な取り組みでした。どのようなきっかけから連携が生まれたのですか? KAGO CLUBの男子が2019年度の『全クラ』(U15ジャパンクラブバスケットボールゲームズ)で初優勝した後、知人を通じて大濠の片峯聡太先生からオファーをいただきました。日本屈指の強豪校からのお誘いは光栄なことでしたし、先ほどお話ししたような状況を変える絶好の機会だと思ったので、「ぜひ」とお受けしました。 ──スキルコーチとして、どのような指導を行っているのでしょうか? 片峯先生から事前にチームの課題をヒアリングして、それを解消できるような練習メニューをその時に応じて組み立てています。毎回同じメニューをやるわけではありませんし、いわゆる「スキルトレーニング」だけをやっているというわけでもないんです。当初は週1回、現在は月2回学校に訪問し、1時間半から2時間程度のセッションを担当しています。 ──大濠の選手たちを指導し、どのような気づきがありましたか? 率直に言うと、素晴らしいキャリアを持っているし体格や能力も優れているけど、スキルやマインドはまだまだだなと思いました。だからこそ、僕ができることはできる限りやってあげたいなと思っています。また、U18トップレベルの水準が肌感覚でわかったので、KAGOとして15歳までに身に付けさせたいものがより明確になったと思います。 後編へ続く
青木美帆