登下校中の小学生を無断撮影、中国語アカウントの投稿が波紋 米沢市は「削除依頼をしたが…」
山形県米沢市の小学生たちが登下校する様子が撮影された動画がSNSで拡散され、波紋を広げている。 【実際の画像】「日本の子どもたちはひとりで下校する」として、女児の後をつける動画が投稿された この動画は、中国語でSNSに投稿されたもので、日本では小学生が保護者の付き添いなしで登下校していることなどが伝えられている。しかし、小学生を追いかけている様子も撮影されていたことから、この動画がXでも広まり、不安の声が上がっていた。 これを受けて、米沢市は12月2日、Xの公式アカウントで警察などと協力し、パトロールを実施すると発表した。
●削除依頼を出したが…
米沢市の担当者は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、動画がXで拡散されていたのを受けて、米沢市や山形県に問い合わせが相次いだと話している。問い合わせは市民だけでなく、県外からもあったという。 米沢市はXの公式アカウントから次のように呼びかけた。 「【パトロールを実施します】 本市児童を撮影したと思われる動画が現在Xで拡散されております。本市では、警察・教育委員会・学校が協力しパトロールを実施します。皆様が安全・安心に暮らせる街とすべく引き続き対応いたします。市民の皆様も、児童の登下校時の見守りをよろしくお願いいたします。」 米沢市によると、警察に相談したほか、Xにも動画の削除依頼をしたという。しかし、担当者は、「規約上は問題ないため、削除してもらえない可能性が高いです」と話す。米沢市では、警察や学校と情報を共有し、パトロールを強化して対応するという。 同様の動画は仙台市でも撮影されている。
●本記事のまとめ
・公道上で子どもたちを勝手に撮影する行為で「罪」に問うのは難しい ・軽犯罪法の適用はあり得る ・民事上の責任は問いうる
●罪に問うのが難しい
公道上で子どもが勝手に撮影されるのは、子どもの安全を守る観点から避けたいですし、気持ちの悪いことでもあります。 ただ、刑法上、このような撮影を禁じる規定は特にありません。 また、ストーカー規制法、迷惑防止条例などで規制ができないかも問題となります。 ストーカー規制法上の「つきまとい」は、「恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」がある場合に認められます(2条1項柱書)。 本件で、撮影者が子どもに対してこれらの感情を充足する目的があるとはいえないと思われますので、適用は難しいと考えられます。 迷惑防止条例上の「つきまとい」は、「特定の者に対する妬み、恨みその他の悪意の感情を充足する目的」(東京都の場合5条の2第1項柱書)がある場合に認められます。 本件で、撮影者が子どもに対してこのような感情を充足する目的を持っているとも思えませんので、適用は難しいでしょう。 軽い罪にはなりますが、軽犯罪法の適用も考えてみます。 同法では、「他人の進路に立ちふさがつて、若しくはその身辺に群がつて立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとつた者」を、「拘留又は科料に処する」としています。 「拘留」は、1日以上30日未満、刑事施設に拘置(刑法16条)するもので、 「科料」は、1000円以上1万円未満(同法17条)のお金を支払うものです。 動画では、リュックサックを背負って歩く小学生らしき子どもたちの背後を、撮影者は動画を撮影しながら追い続けています。そこで、「不安もしくは迷惑を覚えさせるような仕方」で、「他人につきまとった」にあたるとして、軽犯罪法の適用はあり得ると思います。 ただし、軽微な犯罪ということもあり、実際に警察等が動くかどうかは微妙なところです。