登下校中の小学生を無断撮影、中国語アカウントの投稿が波紋 米沢市は「削除依頼をしたが…」
●民事上の責任は?
民事上、肖像権侵害を理由として損害賠償請求をしたり、撮影した画像・動画の削除を求めることは考えられます(民法709条)。 肖像権とは、個人の私生活上の自由の1つとして、承諾なしにその容ぼう・姿態を撮影されない自由、などと定義されています(最高裁昭和44年12月24日判決等参照)。 なお、無断で撮影された、というだけでは、ただちに肖像権侵害が成立するわけではありません。撮影の必要性と、個人の肖像権保護の利益のどちらが上回るかが比較され、個人の受忍限度を超えている場合に、不法行為が成立します。 受忍限度を超えるか否かの判断では、撮影者の地位、撮影された者の活動内容、撮影場所、撮影目的、撮影の態様、撮影の必要性などを総合的に考慮するものとされています。 撮影者の立場から、撮影の目的や必要性を肯定する事情としては、以下が挙げられます。 1)中国語と英語が併記された字幕で、安全面の問題を指摘しており、(形式的には)注意喚起の目的である 2)撮影が公道上で行われている。また、やや遠目から後ろ姿を撮っているにすぎず、顔は写っていない しかし、1)については、それならばわざわざ背後から追いながら子供を撮影する必要性まではないでしょう。むしろ撮影によって子供を危険にさらすことにつながりかねず、逆効果です。 2)についても、一般の子供たちが勝手に撮影され、危険にさらされることを正当化するまでの事情とはいえないでしょう。 子供たちが、どういう場所を、どのように(大人たちに保護されないで)歩いていたのかが分かるだけでも、防犯上は問題がありますし、近所の人であれば、後ろ姿だけでもどこの子供か分かってしまう可能性も十分にあります。 以上より、受忍限度を超えており、不法行為が成立すると考えられます。
●子どもたちを守る必要性
これまでみてきたように、軽犯罪法の適用は一応ありえそうですし、民事上の不法行為責任を追及したり、撮影内容の削除などを求めることも一応できそうですが、子どもの安全に対する不安を払しょくするには全く足りません。そもそも上のような法的措置は事後的な対応でしかありません。 米沢市の呼びかけで事態が終息に向かうことを願ってやみません。 (弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士/小倉匡洋)