国際芸術祭「あいち2025」芸術監督にUAE出身のアル・カシミさん 「国際色出したい」
2025年に愛知県内で開催される国際芸術祭「あいち2025」の芸術監督に、アラブ首長国連邦(UAE)出身のアートディレクター、フール・アル・カシミさん(43)が就任し、27日に名古屋市内で記者会見を開いた。前身の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」を含めて、海外出身の芸術監督就任は初めて。カシミさんは「私のバックグラウンドならではの国際色を出していきたい」と抱負を述べた。
就任あいさつは日本語で「とてもうれしく光栄」
アル・カシミさんはドバイに隣接するUAEの都市シャルジャで生まれ、一時ロンドンでアーティストとして活動。2009年に故郷でシャルジャ美術財団を設立し、現在は理事長兼ディレクターを務めている。中東最大の国際芸術祭とされる「シャルジャ・ビエンナーレ」に長く携わって世界のアーティストと交流を深め、2017年には国際ビエンナーレ協会の会長に選出された。 20年ほど前から日本語も勉強していたとして、この日はすべて日本語で就任あいさつ。「以前から日本のアーティストたちに興味を持っていたが、これまで一緒に仕事をする機会は限られていた。今回、芸術監督に就任する機会を得られて、とてもうれしく光栄」などと述べた。
「過去振り返るのも面白いが、そのままは繰り返さない」
愛知には2010年の初回トリエンナーレを鑑賞しに訪れたが、地域を見て回る機会はなかったという。今後は日本に多く滞在しながら「愛知の文化などを貪欲に学んでいきたい」とし、芸術祭のテーマについては「過去のレガシーを振り返るのも面白いが、過去をそのまま繰り返すことはしたくない」などの考えを示した。 愛知県内での国際芸術祭は3年おきのあいちトリエンナーレが国際的にも認められてきたが、19年の4回目で企画展「表現の不自由展・その後」の展示内容が政治的過ぎるなどとして大きな物議を醸した。この影響で愛知県・名古屋市の行政を中心とした実行委員会体制が見直され、民間中心の組織委員会体制で再出発。森美術館館長の片岡真実さんを芸術監督に招いて昨年、「あいち2022」が開催されて約48万人の来場者を記録した。 組織委員会会長の大林剛郎・大林組会長は「片岡さんは愛知県出身で愛知のことをよく知っていた。アル・カシミさんには逆に外から見た愛知の素晴らしさを発信してもらいたい」と述べた。 (関口威人/nameken)