<甲子園交流試合・2020センバツ32校>注目選手紹介/上 投手編 世代のトップ、譲らない
10日から兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で行われる2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)。中止となった今春のセンバツ出場32校が招待され、各1試合を戦う。球児あこがれの舞台が間近に迫った32チームから、注目の選手を紹介する。 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら ◇大舞台の実績は抜群 中森俊介(明石商・3年) 1年の夏から甲子園のマウンドに上がり、2年では春夏連続で4強入り。大舞台での経験と実績は世代ナンバーワンだが「こだわりは特にない」。理想は勝てる投手。星稜(石川)からドラフト1位でヤクルト入りした奥川恭伸のように、マウンドから“打てない”と打者に感じさせる雰囲気を漂わせることが目標だ。 今では珍しくなったワインドアップから最速151キロの直球に加え、スライダー、カーブ、チェンジアップ、フォークを巧みに操る。「調子が悪くても常に試合を作れる投手になりたい」と、三振を狙うこともなく、低めに投じることだけに意識を集中する。 コロナ禍で全体練習が自粛となった約2カ月間、極めたいと感じたのは直球だった。「勝負球がないのが課題。真っすぐの精度が上がったら、変化球も生きてくる」。米大リーグ・ツインズの前田健太の広島時代の投球フォームを繰り返し見て、リリースの瞬間にだけ力を入れる投球フォームに取り組んだ。 調子のピークは交流試合に合わせている。過去の甲子園ではいずれも敗戦の責任を負っているだけに「最後の甲子園なので勝って終わりたい」と宣言する。甲子園で成し遂げていない完封で、高校生活の締めくくりを目指す。【藤田健志】 ◇最速153キロ、変化球も多彩 高橋宏斗(中京大中京・3年) 7月5日に行われたセンバツ交流試合出場校の智弁和歌山との練習試合。1失点完投勝利も「9イニングを投げきる体力がまだない」と、試合終了後に球場内を黙々と走る姿があった。高橋源一郎監督は「ああいうところが収穫」と、最速150キロ超右腕の姿勢に感心した。 昨秋の公式戦は先発した8試合全てで完投し、6完封。直球は6月の練習試合で自己最速を更新する153キロをマークした。カウントを稼ぐスライダー、併殺狙いのカットボール、さらにはバットの芯を外すツーシームを操り変化球も一級品。新たに緩急をつけるためカーブも覚えた。 コロナ禍で全体練習の自粛期間中は、毎日10キロの走り込みと坂道ダッシュをノルマに掲げた。左足を上げる時に三塁側に顔を向けるソフトバンク・千賀滉大流のフォームや、投球のリズムもオリックス・山岡泰輔を参考にイメージした。「ずっと捕手を見つめることでコントロールのブレもなくなった」と手応えを感じる。 将来のプロ入りという目標は変わらないが、「力がどれだけ全国で通用するのか、センバツが中止になって、自分がどの位置にいるのか不安だった」と大学進学を第一に考える。交流試合では球速155キロを目指し、1年の冬からグラブに記す「世代NO1」に値する投球を披露する。【藤田健志】 ◇暑い季節こそ存在感 岩崎峻典(しゅんすけ)(履正社・3年) 夏男なのだろう。暑い季節になると、存在感がより大きくなる。 7月中旬に行われた智弁和歌山との練習試合。実に昨年11月以来の実戦だったが、2回を投げて被安打1無失点と好投した。「状態は70%」と言いながらも、直球は自己最速タイの145キロをマークし、決め球のカットボールも切れ味抜群で相手を圧倒。エース右腕の貫禄を見せつけた。 1年前も夏に変貌を遂げた。課題の制球難が改善し大阪大会で台頭すると、甲子園では準決勝で1失点完投。星稜との決勝では七回途中から好救援し、春夏通じて初めての全国制覇の瞬間をマウンドで味わった。 ただ、その後は苦しんだ。エース番号を背負った気負いから、昨秋の近畿大会では「フォームがバラバラだった」と制球が定まらず、登板2試合で計7失点と不本意な結果に終わった。今春のセンバツが中止になって以降も調子が上がらずにいたが、そこはエースの貫禄。交流試合を前にしっかりと調子を戻してきた。 昨年の「17」から「1」に背番号を変えて臨む交流試合。「先発でも救援でも、どんな形であれチームを勝たせることができれば。成長した姿を見せたい」と意気込む。対する星稜は、それを証明するのに絶好の相手になる。【安田光高】 ……………………………………………………………………………………………………… 甲子園高校野球交流試合に出場する注目の選手たちを、毎日新聞ニュースサイトなどが運営する「センバツLIVE!」で紹介しています。