ムルシエラゴ、ジャルパ、400GT、カウンタックを乗り比べ|クラシック・ランボルギーニ4台を一気乗り!
最後に試乗したのはカウンタック25thアニバーサリー
●予想を覆したクンタッチ25thアニバーサリー 最後に試乗したのは、ランボルギーニ・デザインのいまを築く礎といっても過言ではないクンタッチの25周年モデルである。 恥ずかしながら、ここまで紹介した3台同様、クンタッチを自分で操るのも今回が初めて。しかも、子供の頃に裏路地で目の当たりにした「クンタッチ・リバース」の光景が目に焼き付いて離れないこともあって、まともに運転できる姿勢やドライビングポジションは到底、得られないものと覚悟を決めていた。 しかし、いざ運転席に腰掛けてみると、その前方視界は驚くほど良好で、ひょっとすると自分のつま先まで見えてしまうのでないかと思えるほど、直前の路面の状況がはっきりと確認できる。それは横方向の視界についても大差はなく、純粋にチケットの受け渡しに以外に使い道のなさそうなサイドウィンドウの開口部が絶望的に狭いことを除けば、隣の車線の様子もよく見える。いっぽうで、後方を振り返っても、エンジンカバーの位置が高いせいで視界が遮られてしまう。ただし、ルームミラー越しにはよく後方も見えるので、少なくとも実用上、不自由をすることはないだろう。 6基のウェバー44DCNFキャブレターからガソリンが供給される排気量5.2リッターV12エンジンを始動させるには、やや長めのクランキングが必要。ただし、一度かかってしまえばアイドリングは安定しているし、回転フィールもスムーズで、キャビンは思いのほか平穏に保たれる。ただし、回転数を問わずエグゾーストノートが低く保たれた 400GT2+2と異なり、クンタッチは回転数を上げると「ウォーッ!」と結構な音量の咆吼を響かせる。その雄叫びは、かなり迫力のあるものだ。 シートのスライド量が限られているせいもあって、足の短い私がクラッチペダルを完全に踏み込むには大きく寝そべった姿勢をとらなければならない。しかも、踏力も重めなので、できれば渋滞路は避けたいと思ったのが、クンタッチを走らせたときの第一印象。もっとも、小径のステアリングはパワーアシストを持たない割には操舵力が重くない。また、サスペンション自体はスーパースポーツカーらしく硬めだが、ボディ剛性が驚くほど高いこともあって不快には感じられない。それよりも、宇宙船を思わせるデザインのクンタッチを、自分自身が走らせているという感動がそれらを大きく上回り、市街地を走っているだけでもつい頬が緩んでしまう。特別な車を操っているという実感を、これほど強く抱かせてくれるスーパースポーツカーも、そうそうないだろう。 ワインディングロードでのハンドリングも私の予想を覆すもので、ステアリングは極めて正確なうえにレスポンスも良好。ロードホールディングも文句のつけようがなかったので、本来であれば至福のコーナリングを満喫しても不思議ではないのだが、試乗車はシフトレバーの動きが渋くて素早いギアチェンジが難しかった。このためワインディングロードをリズミカルに駆け抜けることはできなかったものの、後日、よくメンテナンスされたクンタッチのシフトレバーを操ってみたところ、コクコクと気持ちよくシフトできたので、これがクンタッチ本来の姿だと考えられる。 4台のクラシック・ランボルギーニを試乗して心に残ったのは、モデルごとのキャラクターが意外なほど大きく異なっていることにあった。すなわち、400GT 2+2とジャルパは快適な高速移動が可能なグランドツーリズモで、クンタッチとムルシエラゴはもっとダイナミックな性能に振ったスーパースポーツカーだったのである。 そうしたモデルごとのキャラクターを満喫するには、モデル本来の成り立ちやハードウェアを熟知したうえでのレストアやメンテナンスが必要不可欠なはず。その意味でいえば、ランボルギーニ自身が各モデルの特性に応じてベストなコンディションに仕上げてくれるポロストリコは、クラシック・ランボルギーニを正しく楽しむうえで理想的な選択肢といっていいだろう。 文:大谷達也 写真:アウトモビリ・ランボルギーニ Words: Tatsuya OTANI Photography: Automobili Lamborghini S.p.A.
Octane Japan 編集部