F1日本GPの光と影。3年ぶり観客数アップの鈴鹿は本当に成功だったのか?
日本人ドライバー不在の問題
その一方で、課題も見えてきた。 日本GPのチケットは基本的に3日間の通し券であるため、チケットの実売数は日曜日の観客数と比例する。 今年の8万1000人という数字は、昨年の19%増にとどまった。3年ぶりに前年を上回ったといっても、日本GP単独で採算がとれると言われているベースラインの10万人には、まだ1万9000人足りない。 日本GPが日曜日に当たり前のように10万人以上の観客で盛り上がっていた時代、鈴鹿には三種の神器が常にあった。それは強いホンダ、日本人ドライバー、そしてそれらを伝えるテレビ中継だ。 ホンダはトロロッソだけでなく、来年からレッドブルにもパワーユニットを供給することが決定している。そのレッドブルは今年の日本GPで3位表彰台を獲得。日本GPに3日間投入されたホンダのスペック3は、鈴鹿でレッドブルに搭載されていたルノーのパワーユニットを上回っていたのではないかという声もある。来年誕生するレッドブル・ホンダの活躍によっては、来年の日本GPがさらに盛り上がることは間違いない。 しかし、そのレッドブルにも、そして現在パートナーを組んでいるトロロッソにも来年F1ドライバーとして乗ることができる日本人ドライバーがいない。鈴鹿はレースを行う場所であると同時に、佐藤琢磨ら素晴らしいレーシングドライバーを輩出してきた場所でもある。日本人ドライバーなくして、真の日本GP復活はない。 テレビ中継に関しては、フジテレビNEXTとDAZNの生中継に加えて、BSフジでも録画中継が行われたが、F1ファンを新規開拓するには、やはり地上波でのF1中継復活が不可欠。いきなり全戦復活とまではいかなくとも、海外のように年に数戦だけでも地上波で見られる環境を、ホンダとモビリティランドが中心になってリバティ・メディアと交渉し、整えてもらいたい。 31回目へ向けた準備は、もう始まっている。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)