【特集「乗るなら今だ!心昂る、V8エンジン」③】LEXUSとBMW、艶やかなフォルムに華を添える「憧れの心臓」・・・それぞれの流儀に「プレミアム」の頂を見た
レクサス、BMWともにフラッグシップにV8を搭載
評論家 西川淳氏は、V8エンジン全般を「手の届く憧れのエンジンの代表」と評する。たとえば浮世離れしたV12とは対照的に、クルマ好きのリアルな憧れを獲得してきた存在だ、と。そのうえで、それぞれにブランドの頂点に立つレクサスLC500 コンバーチブルとBMW M8 クーペコンペティションの試乗を通して、現代の最新V8が演じる「フラッグシップらしさ」の根底を解き明かしてくれた。 【写真はこちら】「足の裏から腹を抜けて脳みそに届くエンジンフィール」── 西川淳(全12枚) 面白いことに戦後、その精密さと忠実さという点で品質を競い合ってきた日本とドイツの自動車界においては、ことV8に関していうと、それぞれに特有となるような強烈なイメージはほとんどない。とりわけ高性能エンジンの分野でそうだ。 けれども各ブランドの歴史を仔細に眺めてみれば、決してV8エンジンがおろそかにされてきたわけではなかったことがわかる。むしろ一国の自動車産業として抱えるエンジンバリエーションの豊富さがV8の存在感を相対的に薄めてしまっていたにすぎない。 たとえばジェネラルブランドのトヨタはクラウンエイトに日本で初めてV8を積んで以来、連綿と8気筒エンジンを作り続けてきたし、そのラグジュアリーブランドであるレクサスに至ってはブランドの起点をV8搭載の大型サルーンに託したほどだった。 ドイツのBMWもまた、ストレート6のイメージがどうしても強いが、V8にも絶えず力を入れてきたブランドである。何より、いにしえの高級モデル路線は、戦後のドイツで初となるV8搭載車50Xシリーズで始まっていた。 その究極というべき名車507ロードスターは、直6を積んだメルセデスベンツ300SLのライバルとして誕生したが、プラス2気筒分の優位を誇ろうとしたものだった。 いずれのブランド、すなわちBMWとトヨタ、においてもクルマ好きの一般的なイメージとして最初に思い浮かぶエンジン記号はというと、おそらくストレート6で共通することだろう。シルキー6の異名でその名を馳せたBMWは当然のこととして、実はトヨタにもツインカムヘッドのストレート6に名機が多かったからだ。 翻って現在、やや様相が異なり始めているとはいうものの、BMWとレクサスにおいてはV8がブランドのフラッグシップエンジンとして機能している点は面白い共通項だといえなくもない。 BMWではとくにMの上級モデルにおいて特別なV8ツインターボエンジンを積んでいるし、そのビジネスモデルをなぞったレクサスのFでは磨き抜いたV8自然吸気エンジンを積んでいる。 本稿の主役は、そんな両ブランドにおいて今なお代表的な存在というべき高性能なV8搭載モデル、M8とLC500という2台のラグジュアリー2ドアモデルである。