「名門音大への合格者は事前に決まっている。それが音楽世界の常識」と噓をつき、間接的な金銭要求、ハラスメントと「やりたい放題」の「ヤバすぎるピアノ講師」の実態
進路は講師が決める
冷静に考えると荒唐無稽な話だ。だが、話している人の立場次第では疑いを持たない。そんなこともあるだろう。 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ” 「お父様、音楽の世界では音高や音大(注1)、どこに行きたい、行かせたいだ? そんなことを生徒の側の立場で言うのはおこがましいのですよ。京芸、大音、大教大(注2)……、この子のね、生徒がね、どこの音大だの音高だのに行くのかを決めるのは師匠、ピアノの先生、私なんですよ!――」 興奮気味に大声で怒鳴り散らすこの声の主は、兵庫県内にある自宅でピアノ教室を構えているピアニストにしてピアノ講師女性だ。その年齢はまだ40代には届かないといったところである。 冒頭で紹介した声は、彼女が自身のレッスン生である中学生、その父親から「子どもを県西(注3)に入れたい。それから京芸か大阪教育大、大阪音楽大辺りへ。そのためにはどういう課題をこなせばいいか。そしてそれはいつまでにどのくらいできていればいいものなのか」という質問に対する保護者への回答だ。 その場にはレッスン生である中学生も同席していた。 (注1) それぞれ音楽高校、音楽大学の意味 (注2) それぞれ京都市立芸術大学、大阪音楽大学、大阪教育大学のこと。大阪教育大学は、いわゆる音楽大学ではないものの教育協働学科の芸術表現専攻に設けられている「音楽表現コース」「芸術表現コース」は、それぞれ音楽大学、芸術大学にも引けを取らない人材、設備を擁する大学として界隈では認識されている。 (注3) 兵庫県立西宮高校音楽科のこと
きらびやかな経歴と罵詈雑言
親がわが子の進路を案じて、どうすれば希望する進路に進めるのか、そのためには何をすればいいのか、具体的に質問することはさほどおかしなことではないだろう。 だが、どうやら音楽の世界ではそうでもないらしい。次の彼女の声を聞くとよりその思いを強くする。 「今、中学生、それも2年生? それで小学校4年からピアノをはじめて県西に入りたい? 本当に親御さん何してらしたのかしら。計画性ないですね。あのね、音楽の世界ではね、本当なら中2の今の時期、もう県西とか音楽高校、高校生なら京芸や大音だとかの大学の先生とかに見て頂かないといけない時期なんですよ。高校や大学の“上の先生”に渡さないといけないのに、この程度の技量だと……、私が恥ずかしいですわ!」 怒鳴りながらも品のある声。そのままSM女王としてもプロでやっていけそうな言い回しと間合いでみずからのレッスン生の父兄相手に罵詈雑言を浴びせる彼女だが、その音楽家としての経歴は奮っている。 彼女の公式ホームページからその経歴を要約してみよう。 ≪幼少期からピアノ、ソルフェージュを学び、兵庫県立西宮高校音楽科から京都市立芸術大学音楽学部卒。国内の大学院を経て留学。海外の音楽院で研鑽を積む。帰国後、国内外の権威あるコンクールで入賞多数、――≫ 県西の略称で知られる兵庫県立西宮高校音楽科は兵庫県内では音楽エリート養成の場として知られる名門である。そこから、ときに芸術の世界の“京大”といわれる京都市立芸術大学へと進学し……、という経歴は、音楽の世界に馴染みのない者でも実にきらびやかなそれであることは察しがつこう。