北朝鮮による拉致被害者・横田めぐみさんと「アベック3組の蒸発」「富山誘拐未遂」事件の共通点
事件発覚の端緒となった「富山アベック誘かい未遂事件」
昭和55年の記事の話に戻ります。新聞のリードにはこう書いてありました。 〈裏日本の海岸部、福井、新潟、鹿児島の各地でナゾの連続アベック蒸発事件があり、男女6人が失踪していることが警察庁の調べで判明した。事件は、富山でのアベック誘かい未遂事件を端緒にあきらかとなったもので、発生は53年夏の40日間に限られており、同庁は6日(1月6日)、この連続蒸発及び誘かい未遂事件が同一犯によるものと断定した。犯行はきわめて計画的で広域にわたるが、富山の現場に残された犯人グループの遺留品が、国内では入手不能なことや、失踪当時、現場に近い沿岸でスパイ連絡用とみられる怪電波の交信が集中して傍受されていることなどから、外国情報機関が関与している疑いも強く出ている。〉 事件発覚のきっかけとなった誘拐未遂事件というのは、富山県高岡市に住む婚約中の男女が日本海沿岸の島尾海岸で泳いだあと、不審な4人組に誘拐されそうになった事件でした。この方たちも20代でした。 2人は親類の方たちと海岸にゆき、午後5時頃、気をきかせた親類の方が引き揚げたのち、しばらく2人で泳いだあと、午後6時半頃、4人の男に襲われたのです。 4人は、すれ違いざまに2人を襲って押し倒し、男性を後ろ手にして手錠をかけ、足をヒモでしばり、口にタオルを詰め、さらに特製のサルグツワをはめたうえで、頭からすっぽり布袋をかぶせ、女性も後ろ手にしばり、サルグツワをして、同じく布袋をかぶせたのでした。 4人組は2人を担ぎあげて近くの松林に運んで転がし、カムフラージュのために松の枝をかぶせたそうです。「襲撃は、きわめて事務的で、素早く、4人の任務分担もはっきりしていた、という。4人組は二つの袋を前に、じっと、“何か”を待っていた」と記事にはあります。 この間、2人は4人の会話を一度も耳にしておらず、ただ、女性に「静かにしなさい」と一言いっただけだそうです。30分ほどして、近くで犬の鳴き声がすると、4人は姿を消し、男性が袋をかぶったままウサギ跳びをして、約100メートル離れた民家にたどりつき、体当たりをして助けを求めました。