それでも尹錫悦大統領を熱烈支持する「太極旗部隊」の実態 澤田克己
朴氏の弾劾訴追に反対する右派の集会として始まり、だんだんと大規模なものになった。「積弊清算」という呼ばれた保守派排斥を進めた文在寅(ムン・ジェイン)政権下で主張はどんどん過激化し、資金力と動員力を持つ宗教右派も加わったことで保守政界では無視できない存在となった。ただ極右的な主張が多く、一般メディアはまともに取り上げてこなかった。 この時期に登場した「自由日報」という新興メディアがある。最初はネットだけだったが、すぐに紙の新聞も発行し始めた。立ち上げメンバーの一人は当時、筆者に「既存メディアは、保守系といえども太極旗集会を無視している。だから太極旗部隊の思いを代弁するメディアが必要なのだ」と力説した。 ◇政治の混乱は民主党のせい 「自由日報」の論調を見てみよう。戒厳令直後の社説は「戒厳事態の責任は取らねばならぬが、民主党の免罪符にはならぬ」という見出しだった。ただし、批判の向かう先は戒厳令を提案した形になっている金龍顕(キム・ヨンヒョン)国防相(後に辞任)だ。「戒厳令を提案する程度なら少なくとも軍の動員には自信を持っていたのではないのか」と指摘し、にもかかわらず軍が命令通りに動かなかったのだから責任を取るべきだと辞任を要求した。 そして「戒厳令が宣布されると相当数の愛国市民たちが積極的に支持する考えを表明した。この国はうまくいっておらず、その最大の責任は民主党と李在明(イ・ジェミョン)にある」と、李氏を呼び捨てで批判するのである。野党を「反国家勢力」とする尹氏の主張との親和性をうかがえる。 12月9日付けの社説は「『真の内乱』は憲法破壊の李在明と民主党だ」である。戒厳令についての法的判断は司法に任せるべきだという原則論を示しつつ、現時点での最大の問題は「昨今の政治混乱の原因と展開過程だ」と論じる。そして「政治混乱の原因はすべて李在明と野党勢力、従北勢力にある。彼らは22年5月に尹錫悦大統領が就任した直後から、大統領弾劾を主張した」と指摘し、弾劾を主張する集会を2年間も続けてきたことが「事実上の『内乱予備の陰謀』に当たる」と主張した。