ロシアのウクライナ侵攻“最も現実的なシナリオ”は「戦闘の凍結」将来的な再侵略の危険も…終わりなき戦争と2025年の展望
ウクライナの現状――勝利への課題と西側支援
ラフ氏によると、ウクライナのゼレンスキー大統領の目標はあくまでも「ウクライナ勝利」だが、実現の見通しが立たない中、その内容は現実的な妥協を含む形に変わりつつあると指摘。ロシアによる一部領土の一時的な占領は受け入れた上で、その安全を国際的な安全保障で守る方針を模索しているという。米軍以外のNATOの一部軍隊を平和維持部隊として駐留させる案や、政治的自由と経済発展を強調する「ドイツ分断後の西ドイツ」のようなモデルを追求する可能性があるとしている。 一方、ハラン教授は、ウクライナがすでに部分的な勝利を収めた点を評価。ロシアの当初の計画であるウクライナ政府の崩壊や全土占領は阻止され、キーウからロシア軍を押し戻したことがその証拠だとする。そして、完全勝利には西側諸国による防空システムや長距離ミサイル、最新戦闘機の迅速な供給が必要不可欠だと主張した。
最も現実的なシナリオは「戦闘の凍結」
2人に改めて、トランプ氏再選の影響を踏まえつつ4つのシナリオについて振り返ってもらい、2025年に最も起こりうるシナリオを予想してもらった。 1. 戦争の長期化 両者とも、戦争の長期化は比較的現実的なシナリオであると見ている。 ラフ氏は、ロシアが戦闘を一時停止しつつも長期的な対立に備える余裕があると分析。一方、ハラン教授は、西側諸国の兵器供給が遅れたことが戦争の長期化を招いていると批判する。 2. 戦闘の凍結 両者とも「戦闘の凍結」は現時点で最も起こりうるシナリオだと指摘する。 その理由としてラフ氏が挙げたのがやはりトランプ氏の再選だ。トランプ氏は戦争終結を掲げているが、その実態はあくまでも「戦闘の凍結」になるだろうと指摘。ラフ氏はまた、「トランプ氏の政策が短期的停戦をもたらす一方で根本的解決には至らないだろう」と指摘する。そしてトランプ氏は欧州にウクライナ支援の責任を押し付けようとする一方で、外交的解決が進まなければロシアと対立する可能性も残されているとしている。 ハラン教授も「戦闘の凍結」は残念ながら大いにあり得るとし、それは危険な一時的停戦に過ぎないと警告する。ロシアは軍を再建し、占領地域でウクライナ文化を弾圧し、人口動態を操作することで支配を固める。クリミアがその例であり、これは将来的な再侵略への布石となりかねない。さらに、「核保有国の武力行使を許容する前例」を作ることで、西側諸国に悪影響を及ぼすリスクもあると述べた。 3. ウクライナの勝利 ラフ氏は2022年2月23日の境界線への回復というこのシナリオは現時点では非現実的だとする。たとえ西側が大幅な支援を今後決めたとしても、状況が一気に変わることは考えにくいと指摘。さらに、ウクライナ支援に消極的なトランプ氏の再選はウクライナの勝利よりも、戦闘を終わらせる方法を見つけようという圧力が強まる方向に動いていると述べた。 ハラン教授は、ウクライナの完全勝利は現時点ではなかなか見込めないとしつつも、西側諸国の十分な兵器支援、特に防空システムと最新戦闘機などの武器供給の強化があれば実現できるとする。 4. ウクライナの敗北 ラフ氏はプーチンが求める完全な勝利はアメリカを含む西側が許容しないだろうと指摘。ハラン教授も、このシナリオは最悪の結果としつつその可能性は低いと見る。一方で、ロシアは時間を稼ぎ、ウクライナを不安定化させることで「勝利」を宣言する恐れがあるとした。