「おいしいけど、売れへんのちゃうか」→年間2000万個を売るヒット商品に! ブレイク中のQBB「チーズデザート」は、ひとりの女性社員の“情熱”の成果だった!
嘆き悲しんだ片山さんは、「カップ入りのデザートでなくても、ほかの方法でチーズケーキの味わい、おいしさを提供し、お客様に喜んでもらえる方法はないか」を考えはじめる。そこで目をつけたのが6Pチーズだった。 「丸い形は、ホールのチーズケーキに。1ピースは、それをカットしたようにも見える。それなら、これをチーズケーキにできるのでは……」と考えた片山さん。6Pチーズと同じ設備を使えば、初期投資が少なくて済むという狙いもあった。
開発部長に直談判すると、「それだけ言うなら」と許可が出る。しかし、開発は簡単ではなかった。6Pチーズはアルミ箔にチーズを高速充填するので、糸を引くと、外側を汚してしまうリスクがある。そうならない性質と、おいしさ、なめらかな口溶け、上品な味わい。相反する条件をクリアしなければならなかったからだ。 ■味も製造ラインも、とにかくテストしまくった そこから片山さんは1年半もの間、毎日テストに明け暮れる。約110種類の配合を考え、味も妥協せず、納得いくまでテストを繰り返したそうだ。そして、その中から厳選した30種類を製造ラインでもテストした。製造現場の手間はかかったが、誰もが片山さんの熱意に動かされ、「みんなでやっていこう」と一致団結したという。
こうして2009年に完成したのが、「チーズデザート マダガスカルバニラ風味」だ。味はクリームチーズをベースに、「バニラの最高峰」と呼び声高いブルボンバニラを使って濃厚なチーズケーキを表現した。 今回お話を聞いた六甲バターのマーケティング本部長・黒田浄治さんは、この頃営業本部におり、当然、同商品も何度も試食していた。片山さんの熱意に胸を打たれ、最終的に出来上がった試作品のおいしさに納得すると同時に、こんな思いもあったという。
「確かに、このチーズケーキはとてもおいしい。でも、イロモノのチーズなんか売れへんのちゃうか。そもそも誰が食べんねん……正直、そう思ったんです」 けれど、黒田さんの予想に反し、チーズデザートは売れに売れた。長年現場を見てきた黒田さんでも、見えていなかったニーズが存在していたのだ。そして、「片山さんの熱意」と「おいしさ」に経営陣も賭けたことで、後に記録的な看板商品に成長するチーズデザートは、市場に放たれた。