「おいしいけど、売れへんのちゃうか」→年間2000万個を売るヒット商品に! ブレイク中のQBB「チーズデザート」は、ひとりの女性社員の“情熱”の成果だった!
営業マンがここまで売り込んでくれたのは、開発者が情熱を持って「社内営業」をした結果だという。前編でも少し触れたが、六甲バターでは新製品の発売に当たり、開発者とマーケティング部、営業本部の企画部門担当者が全国の支店を回り、対面で商品説明を営業マン向けに行う。片山さんも、営業マンがスーパーのバイヤーなどを説得するためのデータを携えて全国を回り、丁寧に説明した。質問にも、真摯に答えた。 「フェイス・トゥ・フェイスで、一方向ではなく双方向にコミュニケーションをとる形での説明を、支店ごとにしていったのです」(黒田さん)。さらに、プロモーションのための販促ツールも片山さんが用意したというから驚きだ。
このスタイルがあるからこそ、営業マンは自信を持って売り込むことができ、これまでなかった商品棚を獲得するなど、やりがいも感じられたのだろう。 ■「後は頼む」という思いを伝えたい 片山さんに限らず開発チームには、そこまでやってしまう情熱を持った人がほとんどだそうだ。メンバーは農学部や食品化学系の大学院を卒業した20~30代の若手社員が中心で、若手でもいきなり責任のある商品の開発を任される。 何もわからないところから何度もビーカーテストをして、製造ラインの人々に頭を下げ、やっと上市した商品は自分の子供みたいなもの。すると、「世に出ていくのを見届けて、育ててくれる人たちに、後は頼むという思いを伝えたい。行って話したい」と自然に思うのだそうだ。
このように、若いうちから開発から販売までの全プロセスを見られる環境は、「仕事の自分ごと化」や「他部門を想像して連携できる姿勢」など、中編で紹介した、アメーバ経営の良さともリンクしている。 若手のうちは仕事の一部しか見られない企業も多いなか、そこは大きな差別化につながっているに違いない。 また、開発者はみんな片山さんの開発イズムを受け継いでいるそうで、味には一切妥協しない。それは、六甲バターの「おいしければ応援する」という姿勢や、「お客様の喜ぶ笑顔を想像しながら、喜んでいただける価値を創造し続ける」とうフィロソフィーにも通じている。つまり、新しい製品であっても、そこにおいしさがある限り、社員の共通認識の線上にあり、協力してもらえるのだ。