「劇映画 孤独のグルメ」松重豊さんに聞く、人気ドラマ「12年の集大成、ターニングポイント」の覚悟と決意
ドラマ「孤独のグルメ」シリーズが初めて映画化され、1月10日に公開されます。久住昌之さん原作、谷口ジローさん作画の同名漫画を実写化して12年、今やグルメドキュメンタリードラマの代名詞的存在です。輸入雑貨の貿易商を個人で営み、商談で赴く土地の飲食店で食事することを無上の喜びとしている主人公・井之頭五郎が、映画では究極のスープを求めて世界を巡ります。主演・監督・脚本を務めた松重豊さんにお話を聞きました。 【写真】「劇映画 孤独のグルメ」場面カットと松重豊さんインタビューカットはこちら
あらすじ
輸入雑貨商を営む井之頭五郎(松重豊)は、かつての恋人の娘である松尾千秋(杏)からの連絡を受け、フランス・パリを訪れる。千秋と共に彼女の祖父・一郎(塩見三省)を訪ねると、「子供のころに飲んでいたスープをもう一度飲みたい」と、そのスープのレシピ探しを依頼される。わずかな地名を手掛かりに五郎は究極のスープを求めてレシピと食材探しを始めるが、いつしかそれは国境を越えた壮大な旅となっていく。
原作のリアリティーを持ち続ける
――2012年からドラマが始まり、12年の間、主人公の井之頭五郎を演じていますが、原作漫画からインスパイアされた、または五郎を演じるうえで大切にした点はありますか? いつまでたっても原作の井之頭五郎と僕は、類似点よりも相違点の方が多いぐらいかけ離れているなと思うのですが、やはり久住さんの店選びに対しての哲学と、谷口さんの絵のリアリティーは絶対になければいけないと思っています。原作だって適当な絵で描かれていたら、何の臨場感もわかないでしょう。中年男性がただ店に入って美味しいものを食べるだけなんだけど、谷口さんの絵のリアリティーがこの作品の本質的な部分をもの語っているんですよね。 僕は「孤独のグルメ」をドラマでやるにしても映画化するにしても、そのリアリティーとの戦いだと思っているんです。なので「嘘だろ⁉」と思うような展開でも、リアリティーで丁寧に包んでいくということは、原作に対しての僕らの向き合い方として、常に持ち続けていることです。 ――今作では監督と脚本も手掛けていますが、劇映画だからこそこだわったところを教えてください。 やはり原作好きな方に対してちゃんとお応えできるような内容にすること、テレビシリーズをご覧になっていた方が、映画という形になっても納得のいく内容であること、そして、初めてこの作品を見るのが映画という方でも面白い作品にすること。そのすべてを包括していかないと「劇映画」と名乗ることはできないと思っていたし、その覚悟が必要でした。 ――season1のドラマからずっと見てきましたが、今回、まさか五郎さんがあんな目に遭うとは……!といった驚きとともに、映画ならではの壮大なスケール感がありました。 やっぱり並大抵のことでは人って驚かないので、どういうことに巻き込まれたら、井之頭五郎としてのスタイルを崩さずに、面白おかしく展開できるかと考えた最初のアイデアが、ああいうことになりました。