ウクライナ軍の「超精鋭部隊」で戦う日本人"BIG BOSS"壮絶戦記!
■氷点下10℃、雪の中を決死の匍匐前進 激しい戦闘はまだ続いていた。Bさんは「どうせ死ぬならやれることをやってから」と、戦術式呼吸で気持ちを落ち着かせた。 「水の代わりに自分の小便を飲んで、爆発で焼けた喉を潤し、脱出ルートを考えました。通常では考えないようなハイリスクな選択をしないと、この難局は打開できない。空の色が変わり始め、人間もドローンも視認能力が落ちる夕方5時頃から脱出を試みました。 ベストなどすべての防具を外し、防弾メガネ、ナイフ、手袋だけで、匍匐前進で慎重に進みます。現地の12月はすでに雪が積もり、気温は氷点下10℃。ドローンの音がするたびに動きを止めたので、20m進むのに2時間くらいかかったと思います。 途中でWi-Fiのアンテナが設置されている敵の塹壕や、重機関銃(大口径のマシンガン)が配備されている敵の拠点に行き着いてしまい、何度も来た道を戻っては迂回し、何度も気絶しました。 夢の中で、日本の友達と居酒屋で楽しく飲んでいたら、『こんなことしてる場合じゃないだろう』と言われました。楽しかった思い出が走馬灯となってよみがえる、そのまま気絶する、起きて少し進む。その繰り返しでした」 しばらく進むとBさんは地雷原のエリアに差しかかったが、注意深く土を触って対人地雷の位置を確認し、起爆しないよう通過した。その間も頭上ではずっと砲弾が行き交い、次第に戦闘が激しくなってきていた。 「ドローンからたくさんの爆弾が降ってきました。自分はまだロシア陣内にいましたから、これはウクライナ軍のドローンです。さすがに味方の攻撃で死にたくはない。匍匐前進の速度を上げ、ついに自分たちの拠点が見えました。 ただ、そこに行くには大きな道路を横切る必要があり、スナイパーに狙われやすい。仕方なく2㎞ほど迂回してからウクライナ陣地のほうへ向かいました。 午前11時頃、脱出を始めてから約48時間で、やっとウクライナ兵のいる地域に着きました。発見されたときの自分はぼろ雑巾のようで、すぐに誰だか認識してもらえなかったようですが、英語やウクライナ語で話しかけ、なんとか信じてもらえました」