ウクライナ軍の「超精鋭部隊」で戦う日本人"BIG BOSS"壮絶戦記!
■走馬灯のようなものをずっと見ていた Bさんの部隊は、まずフロントラインゼロ(敵拠点まで100m以内のポジション)で数日間、情報を集めた。 「スコープからのぞけば、赤いテープを腕に巻いたロシア兵が見える距離です。迫撃砲、ドローンからの爆弾、自爆型ドローン、RPG(グレネードランチャー)など、あらゆる攻撃にさらされました。 こちらの拠点もある程度は堅固に造られていますが、それでも近くに砲弾が落ちると一時的に脳震盪になります。激しい砲撃の後にはロシア兵が攻め込んできて、銃撃戦にもなりました」 そんな状況下で、Bさんは敵拠点制圧ミッションのチームに選抜された。作戦開始は夜10時。暗くて付近の地形もあまり把握できず、危険度の高いミッションだった。 「曳光弾がこちらを狙ってくる中、先頭で敵拠点の入り口まで行き、手製の手榴弾を投げ込みました。爆発の衝撃で入り口に大きな穴が開いたのですが、自分だけその穴から地下部分に落ちてしまった。かなりヤバい状況です。 煙が立ち込める中、銃を撃ちながら進むと敵が撃ち返してくる。防弾ベストに4発、左脚に3発食らい、とっさにコンクリートの壁に身を隠しました。敵の声が聞こえ、距離約5mで再び撃ち合いが始まった。手榴弾を7、8個投げ込みましたが、まだ敵の声がして撃ち合いが続きます。 こちらは弾切れになってしまい、ますますヤバい状況でしたが、敵が空のリロード(弾を装填すること)を繰り返す音が聞こえ、お互いに弾切れになったと気づいた。その瞬間、自分が落ちた穴の上から、敵のドローンが爆弾を4発ほど落としてきました。 爆発地点はわずか2m先。無数の鉄の破片が体中に刺さりました。しかし、アドレナリンが出ていて不思議と痛みは感じません。持っている限りの手榴弾を投げたところ、奥にあったガスボンベに引火して大爆発が起き、やっと敵の攻撃がやみました」 Bさんは穴から這い出て、瓦礫の山に身を隠し、脚に止血帯を巻くなど応急処置を施した。周囲に煙が充満していたおかげで、敵ドローンには見つからずに済んだ。 「敵陣地の中ですから、ろくに動くこともできない。誰か助けに来てくれないかと願ったまま気絶してしまいました。目を覚ますとまだ真っ暗で、おそらく朝4時くらい。 明るくなったら敵ドローンに見つかってしまうと思っていたら、7、8m先に身を隠せるスペースを見つけ、匍匐(ほふく)前進でやっとの思いでたどり着きました。自分が通った地面に血の痕ができているのを見た後、また気絶してしまいました」 砲撃の音がして、目が覚めたのは午前11時頃。 「砲撃はウクライナ軍からのもので、どんどん激しくなり、部隊が前進しているのがわかりました。ただ自分は武器もなく、脚が変な方向に曲がっていて動けない。少ししたらまた気絶して、また目が覚めるの繰り返しです。 今、手榴弾を口にくわえてピンを引けば、もう痛みを感じなくて済む......と、自決も本気で考えました。友達や家族のこと、現実にあったこと、想像の出来事―走馬灯のようなものをずっと見ていたと思います。自分の葬式を遺影の位置から見ているという光景も覚えています」 その状態が一昼夜続き、気づけば翌日の昼間だった。