「『もう大丈夫なんでしょう?』と思われていたら悔しい」ーー「原発の不条理」を書いた劇作家と、飯舘村職員になった元テレビマン、11年目の思い #知り続ける
じゃあ被ばく線量を下げるためにはどこを再除染しなければいけないか、考えないといけない。国も東電も、それに応える義務があると思う。もしも『避難指示を解除したら終わりです』と思っているとしたら、それはおかしい。長期的に年間1ミリシーベルト以下を目指すと言っている以上、それに近づけていくように対応するのが、責任というものだよね」 谷「チェルノブイリの例はあったけど、人里のまんなかで事故が起きたのは福島がはじめてで、どういうふうに除染をして、避難解除をしていくか、われわれは手探りでやってきたわけですよね。だから、もちろんもう事故は起きてほしくないが、福島の除染と復興の経緯は人類全体で共有されるべき一つのモデルケースとして、広く知ってもらいたいですね」 大森「そのとおり。これを教訓としないと、当事者が浮かばれない」
双葉町に拠点を持ちたい
谷さんは、大森さんと別れたあと東に向かい、沿岸部にある双葉町を訪れた。『福島三部作』を通じて双葉町とも関係を結んできた。津波の被害にあった町は空き地が多く、いまだ地震が起こった当時のまま手つかずの家屋も多い。
双葉町は今もなお全町避難が続いている。双葉駅周辺は復興拠点に指定され、今年6月の避難指示解除、住民帰還を目指して環境整備が進む。駅の西側のエリアでは、公営住宅建設の宅地造成が進んでいた。谷さんはこう話す。
「原発に近い沿岸の自治体に比べれば、飯舘村の帰村率は高いほうだと思うんです。しかも新規移住者が200人近くいる。ぼくが今関心があるのは、その200人が、残りの1200人とどう関係を築いていくのかということです。あるいはもうすでに築き始めているのか。そこで見えてきた成功例みたいなものが、これから帰還が始まる双葉町や大熊町の人たちの参考になったり、希望にもなったりする気がするんですよ」 谷さんは、いずれ双葉町に拠点を持ちたいと考えている。 「今年か来年か、双葉町に部屋を借りるか、家を買うかしてみようと思って。町の人たちがどこまで必要としてくれるかわからないけど、演劇はコミュニティーの形成や維持に大きな役割を果たすことがあるから。