朝ドラ『虎に翼』1949年の日本では何が起きていた? 社会問題と文化と娯楽でみる日本の復興期
NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』は第12週「女房は掃きだめから拾え?」が放送中。特例判事を務める寅子(演:伊藤沙莉)らがかつて明律大学女子部で共に学んだ大庭梅子(演:平岩紙)と再会して遺産相続を巡るトラブルに立ち向かっている間、日本国内は大きな転換点を迎えようとしていた。1950年から始める朝鮮戦争も迫るなか、1949年の日本と世界の様子を簡潔にまとめてお届けする。 ■日本では戦後復興真っ只中で徐々に新たな秩序がつくられていく 作中の時間軸は終戦から4年、昭和24年(1949)である。GHQのもとで新しい秩序が構築される一方、文化・娯楽が戦後の人々の暮らしに彩りを添えていく。まずはその年に日本国内でどのようなことがあったのか、社会情勢と文化の面からごく一部を一挙にご紹介しよう。 1月:日本国憲法公布後初の衆議院総選挙 2月:「スポーツニッポン」創刊 3月:ドッジ・ライン(財政引き締め)の実施 4月:東京証券取引所設立/1ドル=360円の単一為替レートの実施 5月:通商産業省(現在の経済産業省)が発足 6月:公共企業体日本国有鉄道が発足/日本工業規格(JIS)が制定される 7月:群馬県・岩宿遺跡で日本初の旧石器が発見される 8月:穴の開いたデザインの五円硬貨が発行/キティ台風が関東地方を襲う 9月:日本弁護士連合会が結成される 10月:朝鮮学校閉鎖令が出される 11月:湯川秀樹氏がノーベル物理学賞を受賞/4コマ漫画『サザエさん』連載開始 12月:初のお年玉付き年賀はがきが販売される 作中では多岐川幸四郎(演:滝藤賢一)発案の「愛のコンサート」に前作『ブギウギ』主人公の福来スズ子(演:趣里)が出演するのでは? と思わせる伏線もみられるが、当時はまさに戦後の音楽文化が花開いていた時期。笠置シヅ子さんの『東京ブギウギ』は1947年、淡谷のり子さんの『嘆きのブルース』『君忘れじのブルース』は1948年リリースだ。そして、1949年には美空ひばりさんの『河童ブギウギ』『悲しき口笛』などがリリースされている。 ■米ソは冷戦に突入し、朝鮮戦争勃発が近づく…… 徐々に復興の兆しをみせる日本だが、第二次世界大戦以降、国際事情も忙しなく変化しつつあった。 1949年といえば、アメリカを中心に北大西洋条約が調印され、NATOが発足した年だ。ほかにも、ブータン王国独立、中華人民共和国成立、ドイツ連邦共和国(西ドイツ)とドイツ民主共和国(東ドイツ)の分裂確定など、世界的にもその後の国際社会の在り方を左右する重要な1年となった。 そして、確実に溝が深まっていったのが、アメリカとソ連だ。世界はアメリカを中心とする資本主義・自由主義陣営と、ソ連を中心とする共産主義・社会主義陣営、そしてそのどちらにも属さない「第三世界」に分かれ、所謂「冷戦」の時代に入っていた。 そのなかで大きな火種となっていたのが、朝鮮半島である。戦後、朝鮮半島では1948年8月に南部に大韓民国、9月に北部に朝鮮民主主義人民共和国が成立していた。そして、1950年6月から約3年に渡る朝鮮戦争が勃発する。 『虎に翼』では、崔香淑/汐見香子(演:ハ・ヨンス)を通じて、戦前・戦後の朝鮮出身者の苦悩が描かれてきた。あと1年で彼女の祖国が世界を巻き込んだ戦場になってしまう。果たして、“日本人”として息を潜めるように暮らす香淑の心が救われる日は来るのだろうか。
歴史人編集部