なぜ女子レスリング62キロ級で川井友香子は悲願の金メダルを獲得し姉の梨紗子へ“黄金バトン”をつなぐことができたのか?
同じ階級のなかでも線が細く、特に国際大会では、その体の小ささが目立っていた川井だが、この五輪では、見劣りしない充実した体へと変化していた。 新型コロナウイルスの感染拡大によって五輪が一年延期された期間に体を鍛えた。予想外の出来事が起きても、それをポジティブに変換できた体験が自信にもつながっている。 気が早い話だが、期待されるのは3年後のパリ五輪での連覇。そのためには何が必要なのか。姉の梨紗子のように組み手の巧者を目指すべきか。 「同じようにする必要はないし、目指すべきはそこではないでしょう。それでも気になる点はあります。ここまでの日本選手は全般的に、手首を取られると動きが止まり守りに徹しがちです。川井友香子の決勝でも、同じ場面が見られました。不得意な組み手のとき、たとえば手首をきめられるツーオンワンなどは、守るものと決めてかかっているようです。でも、それはとてももったいない。不利だという感覚を捨てて、攻めるチャンスに変えてほしい。守りではなく攻める技術を磨き、チャンピオンを維持できる選手になってほしい」というのが小林氏の意見。 日本の女子レスリングでは吉田沙保里が3連覇、伊調馨が4連覇を果たした。「連覇」が当然のような目標となり、自身も周囲もそれを求めるが、時代は変化しつつある。女子レスリングが五輪の新種目となって5大会目。選手たちも世代交代し、世界の選手層も変わった。川井とティニベコワのように、試合をしてみないと、どちらが勝つか予想もつかないという接戦も増えている。 決勝ではスタンドから姉の梨紗子が見守り声援を送っていた。梨紗子も、この日、リオ五輪の53キロ級で“霊長類最強の女性”吉田沙保里を破って金メダルを獲得していたヘレン・マルーリス(29、米国)を準決勝で破り、銀メダル以上を確定させて、今日5日に決勝を迎える。決勝の相手は、2019年の世界選手権3位で今年の欧州選手権覇者のイリーナ・クラチキナ(27、ベラルーシ)。 姉妹での金メダル獲得へ。妹の友香子は、「明日まだ梨紗子が決勝戦に残っている。いい形でつなげられたかなと思います」と“黄金のバトン”を渡した。 小林氏も「女子で最も金メダルに近いのが姉の梨紗子。安定しているので、妹がとれば、姉妹の金メダルは、ほぼ手中にあるでしょう。ただ、なにが起きるか分からないのが試合です。そこは気を抜かずに戦ってもらいたい」との見方を示しエールを送った。