偏差値70の二刀流・プロ注目の森井翔太郎、初戦敗退に進路は「五分五分」【24年夏・東京大会】
第106回全国高校野球選手権西東京大会1回戦◇都立富士森 9-2 桐朋◇2024年7月7日◇府中市民球場 【一覧】トッププロスペクトリスト123人
この日の第3試合は、今大会注目の選手である森井 翔太郎内野手を擁する桐朋が登場するとあって、府中市民球場は前の試合の後半あたりから、スタンドが埋まり始めた。球場は独特の雰囲気になり、その緊張感が桐朋を狂わせた。都立富士森の廣瀬勇司監督は、「1回が全てでした」と語るように、1回から思わぬ展開になった。 投打二刀流の森井だが、この試合は3番、遊撃手として先発した。1回表無死一、二塁で森井に打順が回ってきたが、「力んでしまいました」という森井は中飛に終わった。その後満塁となり、敵失で桐朋が1点を先制したが、1点止まりだったことが富士森にとっては幸いだった。 桐朋の先発は背番号1の鬼塚 心優投手だ。鬼塚は本来の調子ではなかったものの、力のある球を投げていた。しかし1回裏富士森は1番・國分 琢仁外野手が左前安打で出塁すると、野選と四球などで一死満塁となり、5番・田代 秀の右前安打で同点に追いつく。さらに鬼塚の牽制が暴投になり、富士森が逆転。加えて四球の後、7番・西村 彪太、8番、先発投手でもある古性 奏の連続安打で富士森が5-1とした。 ここで桐朋は遊撃手の森井を急遽マウンドに上げる。急な登板で本来の調子ではないとはいえ、富士森打線は森井の速球にしっかり対応する。9番・小牧 柊太内野手の内野安打に続き、打者一巡で1番・國分が左前安打を放ち、2人が生還した。桐朋との対戦が決まってから富士森はマシンを150キロに設定し、打ちに行かないで、ボールを見るだけで目を慣らす練習をしてきた。「(マシンより)森井君の方が速かったです」と富士森の廣瀬監督は言うが、その練習が初回の猛攻につながった。 2回表桐朋は3四死球で満塁となり、ワイルドピッチで1点を返したが、3番・森井は前の打席に続いて中飛に終わり、得点を重ねることができない。この試合で森井は3打席回ってきたが、いずれも中飛だった。「外中心で攻めました。上げてくれたらOKです」と富士森の廣瀬監督は言う。打たれたら仕方ないという思い切りの良さが、好投につながった。 2、3、4回と無失点に抑えた森井だったが、5回裏は一死一塁から2番・竹内 颯野内野手の中前安打で一、三塁とし、3番・神田 陽大内野手の二ゴロの間に生還し、富士森は貴重な追加点を挙げた。桐朋は6回からは森井を遊撃手に戻し、背番号10の左腕・杉本 文亮投手が登板したが、7回裏四球の走者がワイルドピッチで二塁に進み、1番・國分の内野安打に暴投が絡み1点を入れ9-2。7回コールドが成立。森井の高校最後の夏は初戦であっけなく終わった。 森井は「手ごわい相手でした。後手後手に回ってしまいました」と言う。それでも相手の送りバントを許さない素早い守備など、二刀流ならではの非凡な野球センスもみせた。高校生活を振り返り、「自分で考えて、技術を伸ばすことができました」と語る。自由にやらせてもらえる環境を選んで、桐朋中からそのまま高校に進んだ。チームメートとは6年間の部活動の中で強い信頼関係ができた。 今後の進路に関しては、日本のプロ野球に行くのか、アメリカの大学に進学するかは五分五分という。いずれメジャーリーグに行きたいという思いがある。高校野球が終わったばかり。進路についてはこれからじっくり考えることだろう。人の話を聞いたうえで、自分で取捨選択して取り入れる能力を田中隆文監督は高く評価する。どの道に進むにしても、今後の活躍を期待したい。 ベテランの指導者である富士森の廣瀬監督は、「森井君は騒がれて、大人として可哀そうだなと思っていました」と語る。この代は、秋も春も都大会に進めなかった。しかし準決勝に進出した2年前もそうだった。「ピッチャーもしっかり投げられているし、一昨年の子たちと似ています」と廣瀬監督。桐朋を破り勢いに乗ることができるか?次の試合は14日に都立調布北・都立東大和南の勝者と対戦する。