LGBTQ+当事者が幼くして覚えるのは“嘘をつくこと”
LGBTQ+当事者が幼くして覚えるのは“嘘をつくこと”
――そう考えると、これまで当事者の立場を慮ることなく、制作側の都合で扱ってきた映像作品やメディアにも罪深い部分があると反省させられます。 「ジェンダーやセクシュアリティに気を配ることが求められる時代になって、『大変だ』『面倒だ』と面と向かって言ってくる方もいらっしゃいます。その気持ちもよく分かります。今までOKだったものを変えていくのは手間暇がかかることなので。 僕が思うに、LGBTQ+当事者の多くが幼くして覚えることは“嘘をつくこと”だと思っています。その一つの例として、ゲイのキャラクターとして誇張されたものが“笑いの対象”としてテレビ等で放送された時、当事者たちが翌日学校などで自分に笑いやからかいの矛先を向けられないように“演技”をしてしまうんです。自分のセクシュアリティを明かさない人にとっては、本当の気持ちとは違うことを考え、発さなければいけない。 今でこそセクシュアリティを掲げた上で活動をしていますが、僕も幼稚園、小学校低学年の頃から、どう考え、どう振る舞い、どう演じるかを考えながら過ごしてきましたし、それでも見抜かれて虐められた経験だってあります。自分の気持ちや発言、行動すべてにひと手間ふた手間加えなければならない面倒くさいことを、僕たちはずっとやってきています。 ですので、セクシュアリティに気を配るのが大変だ、面倒だと言う方々には、『(面倒臭い)気持ちはよーく分かりますよ』と伝えます。それならば、お互いが面倒くさくないようにするためにはどういう形がいいのか、変えていくことを一緒に模索していきたいと僕は考えています」 ――当事者の方々が最初に覚えるのが“嘘をつくこと”というのは、重いですね。自分が何かを発するにあたって、持っていない感覚や価値観にも目を向けられているかは、頭に置いておきたいです。 「実際、別の案を依頼すると、やはりさすが『プロだなぁ』と思わせる面白い意見を出していただいたりします。 ただ、その昔ながらの表現や表象の裏で、多くの人たちが透明化させられたり、かつ、そのネタを面白いと思わない人もいると意識していただくことが、これからの作品作りには必要になってくるのではないでしょうか。 現在もセクシュアルマイノリティとして自分を隠して生きている子供(だけでなく、大人もですが)が、メディアや社会によって負わなくてもいい傷を負わされてしまう環境なんて、どう考えたって必要ないですし、誰もがそうした意識を持つことが当たり前になるためにはどうすればいいかを、みんなで考えていきたいですね」 【プロフィール】 ミヤタ廉(みやた・れん) LGBTQ+インクルーシブディレクター。LGBTQ+が描かれた映画やドラマなどの脚本の段階から参加し、性的マイノリティーに関するセリフや所作などの監修、キャラクター作りなどを手掛ける。映画「エゴイスト」(2023年公開)、映画「52ヘルツのクジラたち」(2024年公開)、配信映画「シティーハンター」(2024年配信)、ドラマ「25時、赤坂で」(テレ東系)などに携わる。