『マッドマックス:フュリオサ』女性をエンパワーするアニャ・テイラー=ジョイの魅力
悪役としてのクリス・ヘムズワースの魅力
明るいキャラクターと筋骨隆々のグッドルッキングがトレードマークのクリス・ヘムズワースは、オーストラリア出身。訳あって汚れたぬいぐるみを持ち歩き、人間味もありつつ残虐行為を働くディメンタス将軍を怪演。
一方、男性のキャラクターはと言えば、そこにもまたなるほどなあと思わせるものがあります。特に、狂気の悪役として登場するディメンタス将軍役のクリス・ヘムズワースは、アメコミ大作シリーズのソー役でもおなじみ。端的に言えば、マッチョイズムを体現するような筋骨隆々の美丈夫のイメージが強いにもかかわらず、そうしたセルフイメージを覆したり、自ら揶揄するような役柄を積極的に演じてきたことで、女性からの信頼度も好感度も高い人気俳優です。 たとえば、男性4人がメインキャストだったオリジナルを女性版としてリメイクした『ゴーストバスターズ』(2016年)では、昔なら女性の役割であったであろう、愛すべきコミックリリーフの受付係ケヴィンという、見た目は抜群にいいけれどおバカに徹したキャラクターを嬉々として演じて話題になりました。 また、『アベンジャーズ/エンドゲーム』では、罪悪感に駆られて酒浸りになり、終始体がたるみきったソーをボディメイクなどによって作り上げて、観客を驚かせました。ファンの中には「かっこいいクリスが見られなくてがっかりした」など批判の声もありましたが、あえてのルッキズムを打破するヘムズワースの心意気を支持せずにはいられません。 そんなヘムズワースが、徹底して女性を痛めつけることを厭わない愚かな悪役を演じるというのもまた味わい深さがあります。フュリオサと宿敵ディメンタスの運命の対決も見逃せません。 当たり前ですが誰もがフュリオサのように強くなれるわけでもないし、なる必要もない世界であってほしいとも思います。しかし、アニャが体現するフュリオサには、見ているだけで自分の中にもそうした強さがあるのだとエンパワーされるような、素晴らしいマジックがあるのです。