来日27年、新小岩・貴州火鍋の看板店長が「中国の人もお腹を壊す辛さ」にこだわる理由
「貴州でいちばん大きい街、貴陽(キヨウ)の唐辛子は、遵義のものよりも細くて辛味が少ない。だから遵義の人は貴陽の唐辛子では物足りないんだよね」。 そう話すリンさんの隣では、料理人が黙々と中華鍋を振るう。そして、そこから漂ってくる湯気だけで、鼻の奥がツンとして、すでに辛さを感じられるのだ。
唐辛子の発酵調味料だけでもかなりの数がある
貴州料理のもうひとつの特徴が発酵。 「貴州は交通が不便な場所だったから、食材を長持ちさせる必要があって、発酵文化が進んだの」。
貴州では塩が産出されず、食材も手に入りにくい。そのため、さまざまな食材を発酵させることで、酸味と旨みを引き出しているという。 発酵させる食材は、トマトや高菜などの野菜、小エビ、魚、なんと米のとぎ汁まである。もちろん唐辛子も、塩や醤油を使って発酵させ、上記写真のような調味料となる。
では、これらの食材を使った貴州料理とはどんなものなのか。
リンさんおすすめメニューと地元の食べ方
「野蒜肉未」1848円 こちらは野草の野蒜(のびる)と豚ひき肉を炒めた季節限定メニュー。 味付けは「これがないと貴州料理はできない」という、唐辛子を塩と白酒で発酵させた「糟辣椒」を使用。とにかく辛いのだが、そのなかにも発酵の旨みを感じることができる。 「日本人は貴州料理にお酒を合わせる人が多いんだけど、貴州では白米。この料理はご飯にぴったりで、これだけで白米2膳は食べられる。貴州料理は米に合うから、すぐにお腹がいっぱいになるんだよ」。 その言葉通り、ビールを飲んでも辛さの余韻が全く消えないのだが、米を合わせると、意外にも辛さが和らいでいることに気づく。
ちなみにお酒といえば、貴州は茅台酒(マオタイ)の産地としても知られている。 「中国でナンバー1のお酒。すごく高価だから『買う人は飲まない、飲む人は買わない』って言われていて、偉い人にお願いごとをするときに差し入れをするお酒だよ」。 ご近所にある中国食材店では、なんと1本5万円以上の値段がついていた。“自分で買っては飲まない”というのも納得の値段だ。