手術をすべきか否か マー君復活方法への賛否
右肘靱帯の部分分裂で故障者リスト入りしたヤンキースの田中将大投手(25)について、キャッシュマンGMは、6週間の保存療法を処置した末に、効果が上がらない場合は、トミー・ジョン(靭帯再建)手術も視野にあることを明かした。田中は10日に整形外科医の学会が行われているシアトルに飛び、ヤンキースのアフメド球団医ら、3人のスポーツ医学の権威の診断を受けた。 同日電話会見に応じた同GMは「医師3人は共に靭帯部分の傷を確認し、リハビリ治療で合意している。我々はその勧告に従う。現段階での手術は勧めていないが、リハビリの結果、手術が最良の治療法なら、選手の名前や投資と関係なく、手術を選ぶだろう」と語った。球団のスタンスとして(1)最初のステップとしての6週間の保存療養、(2)ダメならトミー・ジョン手術、という二段階対応を公にした。 リハビリ治療が成功し、最短の8月末に戦列復帰。ヤンキースのプレーオフ進出の救世主として戦列に戻って来るなら、これ以上の喜びはない。だが、メジャー関係者の間では「長い目でみれば、手術した方が双方のために得策」という見方が出ている。理由は、主に3つ挙げられる。 まず、田中が行うPRP皮膚再生療法という自らの血液から抽出した多血小板血漿を注射する方式は、靭帯裂傷の頻度や個人差で、芳しい効果が上がらない場合がある。2011年に同手術に踏み切った松坂大輔(メッツ)も同治僚法を試みた後で、最終登板から約5週間後に手術に踏み切っている。ドジャースのビリングズリーも12年9月に、手術を回避して同治療法を試みたが、結局翌年の4月にトミー・ジョン手術を受けた。保存療法が必ずしも効かない場合があるのである。 2つ目の理由は、近年のトミー・ジョン手術の成功率が、極めて高いことにある。4月11日付けの「USA Today」の電子版は、昨年12月に発表された論文”American Journal of Sports Medicine”の調査を元に「179人のトミー・ジョン手術を受けた選手のうち、83%がメジャーに復帰、97・2%が少なくともプロのレベルに復帰した。復帰できなかったのは、5人だった」というデータを紹介した。1974年にトミー・ジョン投手(ドジャース)が初めて同手術を受けてから、今年で丸40年。更なる医療技術革新により現在の成功率は85%~95%と言われる。その結果、今世紀に入って同手術の施行例は劇的にアップしている。