手術をすべきか否か マー君復活方法への賛否
2012年にはメジャーで46選手、2013年は24選手、昨年は19選手がメスを入れ、今年はすでに7月の時点で24選手が同手術を施行している。通説では、大リーグ投手の約1/3が、トミー・ジョン手術経験者とも言われている。また、若い時点で手術を受けた選手が、施行後、10年以上、一線で活躍する例も多くなっている。 手術のメリットを指摘する第3の理由は、田中がヤンキースと結んでいる契約にある。7年総額161億円の超大型契約だけに、ヤ軍の痛手は計り知れないというのが、一般の論調だが、7年という長期契約だからこそ、長い目でみれば、今、手術した方がいいという見方だ。 上述のように、同手術の成功率は高いものの、復帰の鍵を握るのは、14ヶ月から1年半を要するリハビリといわれる。プログラムに基づいて行うリハビリを如何に一貫してやり遂げられるか。そのため、選手にとっては、術後1年以上の長期期間、どの球団に所属してリハビリを続けるか、環境の確保が非常に大事になってくる。 2008年オフに手術を受け、事実上、メジャー引退になった大塚晶文(現信濃グランセローズ)の場合、その時点でレンジャースとの契約が切れてFAとなっていたのは、不運だった。一定球団に所属して、トレーナーの処置を受けながらリハビリプログラムを遂行する環境がなかったからだ。ドジャースとの契約最終年の2008年に靭帯損傷の怪我を負った斉藤隆(現楽天)は、保存療法を選択したが、2009年以降の複数年契約が保証されていれば、手術に踏み切ったかもしれない。翌年レッドソックスは斉藤を獲得したが、故障のリスクを懸念し、年俸を低く抑え、その代わり、登板回数などの出来高払いで補償する契約を結んだ。 田中が手術に踏み切れば今季はおろか、2015年も棒に振る可能性は高い。だが、それでも、幸いなことに、ヤンキースとの契約はまだ5年残っている。そこが、大きな意味を持つ。ヤンキースのトレーニング施設で球団ドクターのチェックを受けながら、医療スタッフのサポートを受けて復帰を目指せるからだ。トミー・ジョン手術を受けた後、無所属で放り出されること程、選手に辛いことはない。前述の松坂を含め、3年契約の2年目の4月に手術に踏み切った田沢純一(レッドソックス)、2年契約の1年目となる5月に手術した和田毅(カブス)、同じく2年契約1年目の6月に手術した藤川球児(カブス)は、いずれも手術翌年の身分が補償されていた。