【闘病】夫の「男性不妊」発覚から出産まで 夫婦の絆で挑んだ不妊治療
あなたの精子と結婚したんじゃない、あなたという人と結婚した
編集部: 辛かったときのリフレッシュ法はなんでしたか? 橋口さん: 私の場合、親に話をすることがいい気分転換になりました。あとは、同じ経験をしている人のブログを読んだり、web上の記事を読んだり、ツイッター(現X)でコミュニティに参加したりしていました。 編集部: 治療の前後で夫婦関係に変化はありましたか? 橋口さん: はい。不妊治療を終えて今思うのは、あの期間が夫婦関係の「糧」になっているなということ。これは、結果的に治療が成功したから思えることかもしれません。それでも、妊活の1年半が無駄だったとは思っていないです。 あの1年半に自分たちの気持ちを正直に言い合い、お互いのことを理解しようと思うことができたからこそ、治療前よりお互いの理解が深まった気がします。 治療中は「私だけが頑張っている」という気持ちを持たないようにしようと意識したので、子育て中の今でも「自分だけが頑張っているわけじゃない」というふうに、自然と考えられるようになりました。実際、旦那も私も同じように育児をしています。 編集部: 医療機関に望むことはなんですか? 橋口さん: 私は不妊治療中、ずっと仕事を続けていたのですが、私の就業時間後でも診察をしてくれるなど、フレキシブルに受診対応してくれる医療機関があったらよかったなと思います。そうすれば、仕事をする人でも不妊治療に取り組みやすいと思います。 編集部: 妊娠・出産、不妊治療などについて政府に望むことはありますか? 橋口さん: もっと早い段階で自分の体について知る機会があればいいなと思いました。私自身、妊活を始めるまでAMHという数値の存在すら知りませんでしたし、男性不妊についての知識もほとんどありませんでした。 将来妊娠するしないに関係なく、早い段階から自分の体について知る機会を持ち、「子どもが欲しくなった時にすぐに子どもができるとは限らない。 不妊は十分、あり得るよ」ということをみんなが前提として知ることができれば、いざ妊娠したいとなったときに不妊治療で辛い思いをする人も減るんじゃないかなと思います。 編集部: これから不妊治療を始める方、もしくは、治療中の方へメッセージをお願いします。 橋口さん: 不妊治療は先が見えないからどうしても辛くなりがちですが、今の自分の存在や考えをぜひ認めてあげて欲しいと思います。 私は治療中に、「旦那にひどいことを言ってしまった」「周りの人にやさしくできなかった」など悲観的な考えに囚われてしまい、ポジティブな考えができない自分が嫌になることもありました。でも辛い気持ちを軽くするには、とにかく自分を認めてあげることが大事。 コミュニティや身近な友人、親など正直に気持ちを話せる場所を見つけながら、「辛くて悩んでいるのは私だけじゃない」「自分だけが変なわけじゃない」と考えれば、今の自分を受け入れることができるんじゃないかと思います。 編集部: 男性不妊で治療中の方にも、メッセージをいただければ。 橋口さん: 旦那に不妊の原因があるとわかった時、私も旦那もものすごく落ち込みました。 検査結果が出た直後は旦那にやさしい言葉をかけてあげることができなかったのですが、しばらくじっくり考え、気持ちが落ち着いたときに旦那に伝えたのは、「私はあなたの精子と結婚したわけじゃない。あなたという人間と結婚して、一緒にいるだけで幸せなんだ」ということ。 改めて、「この人と一緒にいるだけで幸せなんだ」ということを再認識できたことは、私にとって大きな出来事だったなと思います。