2週連続V達成の19歳怪物ルーキー笹生優花はなぜ”女タイガー・ウッズ”と呼ばれるほど強いのか?
19歳の怪物ルーキー、笹生優花(ICTSI)が新たな勲章を手にした。ゴルフの国内女子ツアー今季第3戦「ニトリレディス」の最終日が30日、北海道・小樽CCで行われ、単独首位でスタートした笹生は、71のスコアにまとめ通算13アンダーで小祝さくら(22、ニトリ)を振り切り、今季第2戦の「NEC軽井沢72」(長野・軽井沢72G北C)に続く優勝を飾った。初Vからの2試合連続優勝は史上4人目の快挙。10代の選手の2試合連続優勝は、2004、05年の宮里藍(04年サントリーレディス→アピタサークルK・サンクスレディス、05年ヴァーナルレディース→中京テレビ・ブリヂストンレディス)、17年の畑岡奈紗(ミヤギテレビ杯ダンロップ女子→日本女子オープン)に次いで3人目(4度目)という偉業となった。 激しい雨風の影響によるコンディション不良によりスタートが3時間30分遅れ、セカンドカットが行われる異常事態での最終日となったが、笹生は動じなかった。 2番で第2打を池に入れてダブルボギーを叩き2位に後退したが、6番にバーディを奪って再び単独首位に立つと、13番のスコアボードを見て初めてトップを確認。そのままプレッシャーに負けず自然体を貫いて逃げ切った。 「凄くうれしいです。寒い中で無事に終われてよかった。追われる立場というより、自分のプレーに集中しました。プレッシャーも感じていましたが、キャディーさんもいて、お父さんもついてきてくれたのでリラックスできました。優勝はしたかったけど、優勝、優勝という感じで意識はしていなかった」 優勝インタビューでは、素直に喜びを伝えた。10代では史上3人目の快挙を達成したことについて聞かれると「さっき聞いてすごくびっくりしました。畑岡さんや宮里藍さんがやったことを自分もやったんだなという気持ちです」と答えた。
19歳にして圧倒的な強さを見せつけている笹生は“女タイガーウッズ“と呼ばれる。国内ツアー2試合目の「NEC軽井沢72」をいきなり制して、世間をあっと驚かせたが、このときに選んだウエアが「偶然だった」という赤のポロシャツと黒のパンツ。タイガー・ウッズの勝負服ともいえるコーディネートである。 このとき、最終日に同じ組で回ったベテランの藤田さいき(34、チェリーゴルフ)が、「まるでタイガーと回っているみたいだった」と評したことで、この呼び名が独り歩きし始めた。 その藤田は、「力はずば抜けていますね。さくっと賞金女王になって、さくっと米ツアーに行くと思う。距離を出したいときはドローで打ち、止めるときは(持ち球の)フェードで打つ。無観客だったけど、彼女のゴルフをギャラリーに見せたかった」と、笹生をベタ褒めしていた。 確かに圧倒的な飛距離を武器にバーディを重ね、小技もうまいプレースタイルはまさにタイガーそのものである。 この日、マッチレースを演じた小祝は、「球が高くて振り切りがいいのでヘッドスピードが速い。林に入れたとしても、ショットがすごくいいというイメージ。3つ年下だけど、本当にすごく強い選手。プレッシャーにも負けずいいプレーをしていた」と完敗を認め、笹生の強さを称賛していた。 生まれはフィリピン。日本人の父、正和さんとフィリピン人の母、フリッツイさんの間に生まれたが、5歳のときに来日してゴルフを始めた。小学生に上がり、宮里藍やポーラ・クリーマーに憧れ、「将来はプロになりたい」と考え、一度はフィリピンに移住して父の指導の元、練習を重ね、世界中を飛び回り試合に出場した。オーガスタナショナル女子アマで3位タイに入る非凡さも見せ、通信制の代々木高在籍中だった昨年11月にプロテストに合格。今年2月に豪州で行われた米ツアー2試合でプロデビューを飾ったばかりである。 笹生の最大の魅力は、母と父の“DNA”にも支えられているナチュラルなパワーだ。ドライバーの平均飛距離は250ヤードを超える。7位に入ったアマチュア時代に出場した昨年6月の「サントリーレディス」では4日間のドライビングディスタンスは264・250ヤードを記録して1位になった。今大会では、初日の13番(パー5)で残り225ヤードを5番ウッドで2オンに成功し、イーグルを奪った。予選ラウンドで同組だった昨季ドライビングディスタンス1位の穴井詩(32、ゴルフ5)も、「私より飛ぶ」と脱帽していた。